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銀時と桂を乗せて走り出してからしばらく。すっかり日も落ち、街頭などない場所では車のライトだけが頼りだ。そのまま後部座席の二人の指示通りに走らせると、ようやく建物が見えてきた。

「あれが本陣ってやつ?」

「そんな大層なもんじゃないさ。っと、一旦この辺で待ってろ。中の連中に知らせねぇと面倒だからな」

特にこの乗り物。 なんて言いながら、銀時は車内をポンポン叩く。
確かにこの時代に車なんて得体のしれないものが乗り込んできたら敵襲だって思うかもしれないと、ここは従っておこうと車を止めた。

「うっし、また後でな。 んじゃヅラ、説明よろしくぅ〜」

「ヅラじゃない桂だ!!まったく、自分で言い出した事を人に押し付けるなどそんないい加減な性格をしているから毛根が捻じ曲がるんだ」

「ねじ曲がってません〜これはゆるふわヘアーにしてるだけですぅ〜。お前こそ天ぷらの食いすぎじゃねぇの。髪にまで油が染み出てつやっつやしてるぞ」

ぎゃあぎゃあと軽口を叩きながら車を降りた二人を見つつ、マジもんの銀魂だーーーー!と感動を覚える。漫画でもお馴染みの二人の掛け合いを生で見れるなんてこれは夢かと思うが、現状を思うと夢であってくれた方が先を考えるとありがたい。(だって異世界来ちゃいましたとか頭のかわいそうな子って憐れまれる未来しかないぞ…)

何はともあれ、ここに二人で留まれるのは正直とても助かることで。 銀時たちが戻ってくる前にある程度聞かれるであろうことの口裏をひとみと合わせなければいけないのだ。

「とは言ってもどこまで話すかって難しいよね」

「それな。とりあえず今体験してるのが異世界トリップって奴だとしてだよ?うちらの世界じゃここは漫画、つまりフィクションの世界なんですー!なんて言ったら頭弱い子!ってなるじゃんね」

「それもそうなんだけど、どっちかっていうと本人目の前にして“あなたは物語に登場するキャラクターなんです”って言えるかって話だよ。もしそれを私が言われたらって考えると絶対無理」

そう言うひとみとは逆に、自分はそんな事言われたらどう思うか なんて想像できないが、確かに言わない方がいいのは明確だ。だって、この戦争の結末は彼らにとって絶望的なことだろうから。いずれその瞬間を迎えるとしても、それは自分達の口から言うことではない。

それにいくら自分達の見知った漫画でも、登場人物とされるキャラクターが実際に目の前に居て 話をして その空気を感じたら、ここが漫画の世界なんて ただのキャラクターだなんて思えない。自分と同じ一人の人間だ。
そもそも漫画の世界だったらそこに乱入した自分達は何なんだという話にもなってきて。

「だめだまったく纏まらない!!」

「最悪地図さえ貰えば村でも町でも行けるし、安全な場所で対策を練ることも不可能じゃないから漫画って部分だけ話さずありのままを話してもいいんじゃない?」

「気付いたら見知らぬ場所に居てさ迷ってました。って?」

怪しさ満点な話だが、下手に嘘を付いて後々ボロが出るよりは嘘を付かずに本当のことを言わないのも一つの手ではある。
例えば天人の捕虜になっていた。という嘘を付くとどうやって抜け出してきたとか車のことだって嘘の説明をしなければならない。そうやって突き詰めていくと結局信憑性のかけらもない話が出来上がって地図をもらうどころではなくなるだろう。

「そう。気付いたら知らない場所に居た。どうやって来たのかもわからないし、帰り方もわからない。
帰り方がわからない理由は、まず自分達がいた場所は国内で戦争なんてなかったし、刀を振り回していい法律なんてなかった上、天人なんて化け物もいなかった。仮説だけどここは異世界なんじゃないかって思ったから…っていうのはどうかな」

「嘘は言ってないのに物凄く嘘くさい…」

「そもそも私らがここに居ることが嘘みたいな話だからね」

「そうなんだけどさー。まあどうせ嘘で本当っぽいこと並べたってそう簡単に信じないだろうし、それなら嘘ついてるって罪悪感とか多少でも少ない方がいっか」

となれば後は漫画のことと顔のわかるメンバーの名前を聞く前にうっかり呼ばないことだけ気を付ければなんとかなるだろう。いや、何とかするしかない。
そう結論付けたところで、タイミングよく銀時が戻ってくる姿が見えた。


* * * * *


「で?こんなところで迷子だっつー愚図はそいつらか」

で、でたー…初っ端からムカつくー…他の攘夷組に比べてちっこいくせに態度はでかいー…。

銀時に先導され門の前まで来たところで、立ち塞がるように人を馬鹿にしたような視線を送ってくる男が立っていた。
こちらが不審な動きを取ったら斬り付けてくるだろう威圧はあるものの、“迷子”という単語から物凄く見下してきている気がする。鼻で笑う勢いだこれは。

「…あーー…うちら迷子って言うか現在地がわからなくて元の場所に戻れないだけでして」

「それを迷子っつーんだろうが」

「あははーそうとも言うかもですねーーーー…」

なにこれデジャブ。でも圧倒的にコイツから言われる方が腹立つ。
隣を見やれば苦笑しながら 抑えて抑えて と言いたそうなひとみに雰囲気で宥められる。
そうしてイラついた心を落ち着かせようとしていると「あまり失礼な物言いをするな高杉」と桂の声が聞こえてきた。

「俺は事実を言ってるまでだ」

お前はガキか。
ケッとでも言うように顔を背けた小憎たらしい男、自分が一番会ってみたかった人物
高杉晋助に、治まりかけた苛立ちが再び湧き上がるのを感じた。


第一印象
(きっとお互い最悪に違いない)
11/0316→17/0531