全部片付けたと思ったんだけどなぁ。
いや、多分全員一度は地面と熱い抱擁を交わさせたはずだ。
おそらくコイツはダメージが薄くて起き上がってきたんだろうけど、背後からとはいただけない。
気付いた時には既に相手は得物を振り上げていて、どうにも完璧にかわせるタイミングを逃していた。
でもまぁ、あれだ。
「タダで殴らせてやる程アタシは安くないんで…ね…?」
避けきるのは無理でもダメージを最小限に、尚且つ一発お見舞いしてやろうと拳を振り上げたところで異変に気付き、反射的にピタリと拳を止めた。
「女性相手に背後から、しかもこんなモノで殴りかかるとは感心できませんね」
この場に似合わない喋り方にその場が数拍時を止める。
周囲の視線を一身に浴びる男は、綺麗に整った顔のパーツ 特にすっと通った鼻筋が印象的で。程よく筋肉がついているであろう体から延びる腕が、アタシ目がけて振り下ろされた鉄パイプをつかんでいるのがやけにはっきり見えた。
「貴女も」
しんと静まり帰っている場にだんだん近づくサイレン音をBGMに、ぽかんと突然現れた男を凝視していると、突然その視線が自分を射抜き思わず上ずった返事が漏れた。
「女性がこんな夜更けにこの様な所でこんな事をするのはあまり褒められたことではありませんよ。…痕が残ったらどうするんです」
あえてなのか暴力的な部分はぼかしてそう言われ、伸ばされた手が頬に触れるとピリッとした痛みが走り眉を寄せる。男は小さくため息を吐き、未だに掴んでいた鉄パイプを殴りかかってきた男ごとペッと捨てるように払い、持っていた鞄をゴソゴソ漁り目当てだったであろうものを取り出し再びアタシの頬に触れた。
「洗って消毒した方がいいのですが、生憎そのようなものを持ち合わせていないので、家に帰ったらご自分できちんと手当してくださいまし」
やたらと丁寧な物言いに流され はぁ…と頷いてしまったが、それを良しとしたのが「ではわたくしはこれで」と男は踵を返し去っていった。
暫く何をされたのか思考がついていかずに去っていく男の背中を見ていたが、その男に払われた男が動くのを視界の端に捉え、とりあえず意識を飛ばすぐらい強く蹴り倒しておいた。
絆創膏
(頬に当てられた手の感触が妙に残った)
20130113