丁寧な言葉遣いの男に(不覚にも)助けられてから数日、チームの奴らがあの男の正体がわかったと連絡が入った。
「…で、アイツがここに居るって?」
「はい!なんでもあのバトルサブウェイのマスターの一人だとか」
「マスター、ねぇ…」
ここライモンで有名なバトル好き(といえば聞こえはいいが、結局ただの廃人)の集まる施設のマスターを務める奴ともなれば、リアルバトルもそこそこ腕がたつのだろうかと先日の事を思い出す。
相手の死角にいたとは言え、一人の男を難なく捻り上げ言いたいことだけ言って去っていったあの男は大分お節介なんだと見た。
普通なら見て見ぬふりをして足早に立ち去ろうとする喧嘩現場に堂々と乗り込み自己満足で帰っていくなんて早々できることではない。
こちらからしてみれば自分の行いに口出され少々面白くない思いをしたものの、助けられた事実は変わらないわけで。
(礼の一つぐらい言っとくのが筋か…と思ったのに、)
「申し訳ありませんが、そのような呼び出しを通すことはできません」
(なんてめんどくせぇんだバトルサブウェイ…!!!!)
適当にその辺にいる駅員にサブウェイマスターにようがあると言えば呼んでもらえるなりなんなりして会えると思っていたが予想は大きく外れ、私情での外部の呼び出しには応じられないと伝えてすらもらえなかった。
イラつきながら場所を移動してどうしたものかと考えていると、同じように断られている女性が何人もいて何となく理由を理解する。
確かに、暗がりなあの状況でも男の顔が整っていたのがわかったんだ。明るいところで見れば更にイケメンに違いない。
で、あの女達はそんな男に群がる取り巻きといったところか。
「…ってことは何だ、アタシもその取り巻きに間違われたってことか…?」
ただ礼を言いに来ただけだっていうのにどっと疲れた気がした。
しかも目的は果たせずじまいで、これはあれか、会うにはバトルで勝ち進むしかないってことか?
「お前ら、ちょっと頑張ってな」
呟きながらボールをなでた。
先は遠い
(もう礼なんて適当に菓子付けて郵送にしてやろうか)
20130114