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いくら喧嘩が好きじゃないといっても、こう言う奴らが居るから暴力を振るわざるを得ない。

ため息を吐きながらぞろぞろと自分の周りを囲む連中を見やり、首を左右にポキポキ鳴らしてグッと伸びを一つ。
何か用かと聞けば、チンピラお決まりの仲間が世話になったな だとか、ここが自分達の縄張りだ とかゴタゴタ煩い。
そもそもここはお前らの土地じゃないだろうに。何だ縄張りって。お前らはミネズミか。
一々相手にするのも馬鹿らしく、適当に場所を変えようと動けば行かせないとでも言うように目の前に群がりニヤニヤと気持ち悪い笑を貼り付けていて頭が痛くなる。
もう一度ため息を吐き、どうしたもんかと相手を睨みつけてやればふと自分と相手の間に何かが素早く割り込んだのが見えた。

目の前にいる奴らを威嚇するように低く唸ったのは野生のイーブイで、それに一瞬思考を取られ気付いたときにはイーブイが奴らに飛びかかった後だった。


この近くにイーブイは生息していない。
それでも実はよくある話で、ここはバトル施設が有名な街。ポケモンの能力を見ることに長けた奴もいて、所謂厳選漏れしたポケモン達がトレーナーにあっさりと捨てられるのだ。
生まれたばかりで自分の身を守る術を知らないポケモン達は、保護施設で新たなトレーナーに出会うか、自分の身を守れるほどに成長して野生にかえされるかが殆どだが、中には見つけにくい場所に捨てられそのまま死んでしまう子達もいた。

このイーブイも最近見つけ保護した子で、見つけた時には衰弱しきって今にも死んでしまいそうだったがなんとか治療を受け元気に駆け回れる程に回復したのだ。
その後はイーブイ自身が保護センターを嫌がり、脱走を繰り返すらしくアタシらが夜集まっているところにひょっこり顔を出して以来、チームのやつらに可愛がられていたわけで。
だから多分、絡んでくるコイツらが敵だと認識して敵から守ろうと割って入り、その体格差も気にせず飛び掛かったんだ。




「イーブイ!!!」

結果はわかりきっていたのに。
もっと早く自分の体を動かし止めていたら。
あっけなく、蹴られその身を壁にぶつけ、地面にうずくまったイーブイを見て自分の中で何かがフツフツと湧き上がり、その衝動を止めることなんてできなかった。



* * * * *



今朝から続いていたトラブル対処が漸く終わり、それどころではなかった時計に目をやれば既に日付が変わっていた。これ以上のトラブル対処は御免だと、手短に仕度を済ませて自宅へとバイクを走らせる。
ふいに悲鳴のようなものが聞こえ、そういえば近頃街を騒がせている暴力グループのことを思い出し声の聞こえた場所へと向かえば、そこには一人の女性とその周りを囲むように倒れている男たちの姿が目に入った。

悲鳴というだけで女性の物だと錯覚していたがそれは全くの間違いで、寧ろ瀕死状態なのは男達の方だった。
それなのに女性はその手を止めることなく相手を殴り続けていて、それは怒りで我を忘れているようにも見えた。

よくよく見れば、先日自分が割って入った時に見た女性と一致し、これ以上彼女が殴り続ければそれこそ相手が死んでしまうとすかさず止めに入った。


「やめなさい、これ以上は危険です」

近づけばこちらにも向かってきそうな気迫を纏っていたが、どうにも目の前の男にしか意識がいっていなかったようで簡単にその手を止めることができた。

「こんなやつ、死ねばいい!!」

尚も殴ろうと掴んでいる手を振り解こうとするものだから、少々力を入れ止めれば逆の手で襟首を捕まれ吐息がかかる程近くに顔を寄せられその怒りを一身に浴びせられる。

「そこまで激昂するには理由があるとは思いますが、だからといって目の前で人を殺しかねない人を止めないわけにはいきません」

「お前には関係ねェだろ!!こいつらは!!あの子を…ッ」

そこまで言うとはっと我にかえった様に表情を変え、殴っていた男や自分から意識を外し辺りを見渡す。その視線がある一点で止まると一目散に駆けだし、その場にしゃがみこんで何かを抱き上げ走り去ろうとした。

「待ちなさい、どこに行「煩い!!早く!早くこの子を治療しないと…!!」

慌てて走り去ろうとしたその腕を掴み止めれば、先程のように敵意のこもった瞳で睨まれるものの両手が塞がっているため襟首を掴まれることはなかった。
何をそんなに必死になっているのかと、塞がっている彼女の腕の中に目をやれば、苦しそうに浅い呼吸を繰り返す幼いイーブイが抱えられていた。


理由
(バイクに彼女を乗せ、センターへとスピードを上げた)
20130117