世界に取り残された日

ーーこれは、俗に言うフラッシュバックだろうか。

全てが嫌になって、ビルの屋上の端っこに立った。ここから落ちてしまえば、全て終わる。言いようのない感情に襲われ、ふと目を閉じた、その時。ここではないどこかのわたしを、見た。

「え、」

なんの変哲も無い人間だった。何となく生きて入社した会社が所謂ブラック企業で、でも辞める勇気も死ぬ勇気もないから耐え続ける、そんな凡庸な人間。
それがわたしのはず。わたしだ。ほんとうに?わたしって、誰だ。
眩暈がするし、何だか吐き気まで込み上げてきた。視界に飛び込んでくるのはビルの下にある地面で、意識が遠のきそうになるのを感じる。わたし、高いところ駄目なのに、なんでこんなところに。
思わず背後の柵というには心許ないものを掴む。自身の置かれている状況は自分にしかわからないのに、高速で置き去りにされている。誰か助けてと口にしたいのに、それすら億劫だ。
とにかく、不安定な足場から離れたい。しっかりと地面に足をつけて、考え事をしたい。さっきまでと着ていた洋服が変わっているとか、そもそもここはどこなのか、とか。
そんなことを考えていると、突然階段に続く扉が音を立てながら開く。驚きで身を固めていると、少し古ぼけた扉の向こうに居た人はもっと驚いていた、多分。わたしの顔は見えないから断言できないけれど。

「は……」
「は……?」
「早まっちゃダメっすー!!」

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