「ん、」

泥のように沈んでいた意識がふ、と浮かび上がる。やけに温さを感じて、うっそりと重たい瞼を開ければ、目の前には肌色と赤い刻印。見慣れすぎたそれに、ルーラはぴしり、と固まった。

「は.......?」

 自分は1人で寝たはずなのに、何故かギルガメッシュが隣で寝ている。しかも、ギルガメッシュの胸元に抱き込まれるよう体勢で腰が完全に固定され、身動き1つままならない。

「お、おーさま、?」

 ギルガメッシュを起こさないよう、唯一動く顔をそっと動かす。ゆっくりと見上げればギルガメッシュの瞼は固く閉ざされ、赤い瞳は隠されている。すうすうと気持ちよさそうに寝息を立てているギルガメッシュの姿に、ほんの僅かな欲が心の底からゆっくりと浮かび上がってくる。

(.......ちょっとだけ、)

 誰に言うわけでもなく心の中で言い訳して、ギルガメッシュを起こさないようにそっと背中に手を回す。ギルガメッシュの服をきゅ、と掴めばより一層密着した体に、じんわりと人肌の温もりが伝わってくる。
そのままギルガメッシュの胸元に顔を寄せれば、とくん、とくん、とゆっくりとしたリズムを刻んでいる心臓の音が耳に入って、意識が緩やかに解けていく。

(おーさま、)

 すぅ、と息を吸えば、ギルガメッシュが好んでいる香の匂いが肺を満たす。甘すぎず、ほんの少し苦味も混じったギルガメッシュの匂い。
 傍にいることを許された。好きでいてもいいと許された。ただそれだけだ。ギルガメッシュから向けられているものを恋愛感情だと言うほど、ルーラは自惚れていない。これもきっと、たまにあるギルガメッシュの気まぐれだろう。
 今以上の関係は望まない。ギルガメッシュからこれ以上の感情を求めないから。
 だから、せめて今だけは。




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