ふわり。タバコの匂いが微睡んでいたギルガメッシュの鼻を掠める。意識を覚醒させてゆっくりと起き上がれば、寝台の端に座る匂いの元凶が目をぱちくりさせながら、申し訳なさそうに笑った。
「ごめんおーさま。起こしてしもた?」
寝台の上でタバコを吹かすルーラの姿に顔を顰めれば、それに気づいたのかルーラが苦笑しながら灰皿にタバコを押しつける。その手馴れた姿に溜息を吐けば、ルーラの視線がうろうろと辺りをさまよった。怒られるとでも思ったのだろう。僅かに体を強ばらせた
ルーラの腕を掴むと、ギルガメッシュは寝台にへと寝転がった。
「うわっ、」
いきなり手を引かれたルーラの体は、重力に逆らうことなく寝台に倒れ込む。その細い体の腰を抱いて腕の中に閉じ込めれば、ルーラが僅かに身じろいだ。
「おーさま今日はおねむなん?いつもやったら起きんのに」
「まだ陽も登っとらんではないか」
そう言いながらルーラの首筋に顔を近づければ、ルーラの本人の匂いと、直前まで吸われていたタバコの匂いが混ざりあっている。まるで成長途中の子どもが無理やり大人になろうと背伸びしているような香りは、正しくルーラを表しているようだった。
どろり、と奥の方から滲み出す感情を押さえつけながら、ギルガメッシュはルーラの体を抱き寄せる。
「おーさま…?」
「我は寝直す。貴様も付き合え」
そう言えば渋々目を瞑ったルーラの背中をゆっくりと撫で軽く叩いてやれば、抵抗するように腕の中の体が僅かに動いた。
「…うち子供ちゃうねんけど」
「やかましいぞ。疾く寝ろ」
悪態を流しながら幼子をあやす様に、心拍と同じペースでゆっくりと背中を叩いてやれば、抜け出そうともがいていたルーラの呼吸が段々と浅くなっていく。しばらくしてすぅ、と聞こえてきた寝息にギルガメッシュはゆっくりと息を吐いた。
しっかりと寝息を立てて眠っているのを確認してから頬に触れれば、かなり冷たくなっている。いつから起きていたのかは分からないものの、冷えきっていた体は随分早くから起きていたのを知らしていた。
大方、早く目が覚めてしまったものの再び眠ることができなかったのだろう。存外寝起きの悪いルーラが己よりも早く目が覚めることなど無いに等しいのだ。
「全く……ここまで我の手を煩わせるやつなど初めてだ」
ルーラの頬に触れながらそう呟けば、自分でも驚くほど優しく甘やかな声が出て眉間に皺を寄せた。惚れた弱みというのはここまで己を変えてしまうものなのか、などと考えるが永遠に答えなど見つからないのだろう。
滲み出す思いを閉じ込めるようにルーラの体をさらに強く抱きせると、ギルガメッシュも再び目を閉じたのだった。
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