今でも夢に見る。真一郎を殴った感触。場地を刺した感触。サイレンの音。血の匂い。地面に流れるあか。あか。赤。
「一虎」
千明の声が聞こえ、意識が引き戻される。ゆっくりと顔を上げれば、心配そうに眉を下げながら目を合わせてくる千明の姿にこてん、と首を傾げた
「千明…?」
「一虎、大丈夫か?腕、消毒するな」
千明が救急箱からアルコールと包帯を取りだす。手慣れた様子で腕を手当するのをぼんやりと眺めながら、ようやく自分が自傷行為をしていたことに気づいた。
出所してから、時折自分がどこにいるのか分からなくなる。過去にいるような気もするし、今にいるような気もする。意識があっちこっちにふわふわとするのをつなぎ止めてくれるのはいつだって千明だった。
「千明、ごめんな…」
「大丈夫だって。私は何があってもずっとお前の味方だよ。ずっと、一緒だ」
自分は救われてはいけないのに。千明のその言葉で救われてしまう自分がいる。それが嫌で、手当されたばかりの腕をぎゅう、と掴めば血が滲む。場地の体は、真一郎の頭は、もっと血が出ていた。
許されてはいけなくて、救われてはいけなくて。
それでもおれは、どうしようもなく弱くて。千明の言葉に縋ってしまうのだ。
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