「もし私が喰種だったら鋼太朗は私を殺してくれますか?」
物騒な言葉に、隣に座る亜門がぱちぱちと数度瞬きを繰り返した。困惑と、少しの躊躇い。視線をさ迷わせる姿に、ハルヒは思わず笑ってしまう。恐らくどう言えば良いのかを迷っているのだろう。ハルヒが傷つかないように、言葉を選んでいるのか、数度口が開いては、閉じてを繰り返す。
こういう、嘘をつくのが下手くそなところが、ハルヒは1等好きだった。
「そうであれば、恐らく俺は殺すだろうな」
数分か数秒か。存外長く感じてしまったのは自分だけなのだろう。ひどく言いにくそうに、それでもハッキリとそう答えた亜門に、ハルヒは心の中で薄く微笑む。想像通りの答えに、体の奥の方から黒い感情がじわじわ湧き上がって、腹の底に溜まっていく。
「急にどうしたんだ。そんな事聞いて」
「最近、テレビでよく聞くので。単なる好奇心ですよ」
戸惑いの目を向けながら見つめてくる亜門にへらり、と笑えば、それ以上何も追求せずに居てくれる。その優しさに甘えながらハルヒは亜門に体を寄せた。
「…私はね、鋼太朗に看取られて死にたいんです。最後に見る景色はあなたが良い。だから、他の誰かに殺されるぐらいなら鋼太朗の手で死にたいと思いまして」
「お前は喰種では無いだろう。なら、俺がお前を殺すことはない」
「物の例えですよ。私が鋼太朗の傍で死にたいだけです」
「…お前が死にたくなったら、何回でも俺が止めてやる。だから、そんなことを言わないでくれ」
過去、出会った頃の自殺未遂を思い出してか、亜門の顔が険しくなった。そのまま強く体を抱き寄せられ、逞しい腕の中に抱かれる。亜門の背中に手を回しながら、ハルヒは瞼を閉じた。
この腕が、クインケを振るい、自分の肉を割いて、穿つのを何度も想像する。
どうせ短い命なのだ。願うことなら、愛しい人の手で死にたい、だなんて。
到底、口に出せない願いを抱いてしまっているのだ。
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