「これくらいでいいか?」
日吉が差し出した大き目のお茶碗の中には、日吉が食べる量と同じくらいのご飯が盛られている。
日吉の食べる量は一般的なものより少し多くて、自分にとっては多すぎる量だ。
薄縹色の少し大きなお茶碗は、財前が日吉用にと選んだものだ。人より多めに食べる日吉にはちょうどいいだろうと渡すと、ならお前にはこれだと、萌黄の小さめのお茶碗を渡された。
二つのお茶碗はお互いが食べる量にちょうど良く、それ以来一度も使う人を変えたことがなかった。
「……。」
日吉が用意したのは、薄縹色のお茶碗と、随分前に使ったきりの紺のお茶碗。
お互いの茶碗を選んだことも、茶碗の役割分担も、この人は知らないのだと心が痛んだのを無視して笑った。
「多いか?」
「いや、今日はいっぱい食べたい気分やったし、ちょうどええわ。」

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