冬の日の朝



ゆっくり呼吸を繰り返す胸に手を置いて、いつもより身体を寄せていた朝。
まだ眠る彼のとなりで先に目が覚めた。
携帯に手を伸ばす前に、斜め上に見える寝顔をじっと眺める。





「…ともちゃん」


温かくて、いつまでも眠れそう。
昨日の夜は何も無かったけど、お互い時間を気にせず眠れるのって久しぶり。

じっくり寝顔を見られるのも、久しぶり。




「…*」




年の瀬にラッキーだなぁと思う私は、付き合い始めの頃より確実に彼のことをずっと好きになってる。



「かわいいなぁ」


ただ寝ているだけなのに、こんな感情になるのは変かもって思うくらい、わくわく、どきどきしてる。
口元にふたつ並んだホクロや、耳のピアスの穴を見つめたり、我ながらちょっといけない趣味のようで



「………」


撃沈。


「……」




でも、




本当に、




出会った頃よりもっとずっと好きになってると思う。




『…ん』

「…」





反対側の手で目を擦りながら眉を寄せて、呼吸のリズムを持ち直す彼。



「…」


もう少しだけこうしたら、今朝はわたしが朝ごはんを作ろうかな。





『…んにゃ』

「!」

思わず、がさっと羽毛ぶとんをかきあげてしまった。







『……』











寝言だったようで、それもまたきゅん。



「困ったなぁ…」




ベッドの上にぺたんと座って、頭からこめかみにかけてをそっと撫でた。

本当は昨日もちょっと構って欲しかったけど、自分からはそんな自己主張を可愛らしく出来ない。

おやすみ、と言って数分も経たないうちに先に眠り込んだ彼の横で、あとを追うように夢の中へ行っても、朝が待ち遠しかった。



「…」


身体を屈めて口元にキスをすると、ちゅっと音が鳴った。





「…おはよう、ともちゃん。…朝ごはんの支度するね」

お布団を掛け直して、自分だけベッドから離れた。

部屋着姿のままシュシュで髪を束ねて横に流す。



「…よし、」

少しひんやりしたキッチンで袖をまくって水を出そうと手を伸ばす。






(ぎゅっ)




「…!」




腕ごと掬い取られて抱き締められてすぐ、肩に顎が添え置かれる。

視界の端に見える、綺麗に色の入った髪の寝癖頭。






『…〇〇』

「…おはよう、ともちゃん」


おはよう、より先にわたしの名前を呟く彼が可愛くてまたキュンとした。



『キスするなら、ちゃんと唇にしてや』

「…」




え?








少し振り向くと鼻筋が当たる。

まだ起き抜けの微睡んだ視線で見つめられ、わたしは下唇をギュッと噛む。







「…いつからっ、…ん!」


一気に跳ね上がる鼓動。

自分でもドキドキしているのが分かると、どんどん恥ずかしくなる。




『…な?』




なっ、

…な?



って、





『こういう風にさ?』


唇が離れたあとも、そんなことなんて平気だと言わんばかりに、少し微笑んで、おはよう。と抱きしめたままわたしの方へ頭を倒す。





「…」

何がどう、なってる?



『お腹減った*…何作る?手伝うで』

「…」

『…ちはる?』


「う、…うん」

『…え?なに?(笑)』


何って、


…何?って



…何!




『耳真っ赤っかやで?(笑)』!


〜っもう、!!!



「いつから起きてたの?」

『…頭撫でられたくらいかな?』

「えぇ…そうなの…」



お腹のところで交差する彼の腕にもドキドキ。




「…ともちゃん、」


ん?とわたしを見た彼を振り向いて、頬に手を添え少し背伸びをしようとすると、彼が背中を屈め、重なる唇。



『おはよ』





***
2018.12.30