※注意、女言葉、主人公が使っている。先輩と後輩設定。
ピッカーン、ゴロゴロ。部室に雷の音が鳴り響く。うう、怖い。私はぎゅっと目を瞑って、耳を塞いだ。ひいいぃ⋯⋯誰か、誰かぁ。自室だったらブサカワなぬいぐるみに抱き着いていた。しかし、ここは部室だ。しかも、私以外にもう一人後輩がいる。自分のメンツを守るためにも、怖くても平気なフリをしなくては。音が鳴り止んでから、私は耳から手を離した。
「もう止んだ?夏はこういうことよくあるわよね。びっくりした⋯⋯」
勉強に戻ると、再びゴロゴロゴロゴロと再び凄まじい音がして。どうやらまだ止まないらしい。長期戦か。ああ、どうしよう。
「⋯⋯⋯」
「みょうじさん顔色悪いっすよ」
「⋯⋯そんなことないわ」
正直、歯ぎしりが止まらない。何とか食いしばって抑える。我慢しなくちゃ。
「⋯⋯もう帰った方がいいんじゃない?あんまり遅くに帰るのは良くないと思うし」
「こんな雷やばい中、帰らそうとするなんて先輩鬼畜っすね」
「ご、ごめん」
なんてこと言ってるんだ自分。先輩としてのメンツを保ちたいがあまり、滅茶苦茶なことを言ってしまった。反省しなければ。私は再びプリントに目を向けた。
「みょうじサン。何やってるんですか?」
「数学のプリント」
「へぇ、どんなのやってるか見せてくださいっ」
「⋯⋯」
「課題やってたけど、いいの?」
「飽きました。だから、みょうじさんの邪魔しようかなと⋯⋯」
しれっとした顔でなんてこと言うんだ。
ある意味感心する。
「みょうじさん、2人っきりですね」
「私が出てけば高尾くん1人よ」
「先輩、オレの扱いひどくね?」
「そんなことないわ、たぶん」
「多分って何すか?」
「⋯⋯高尾くん、世の中には知らなくていい事が沢山あるのよ」
「ドヤ顔WWふっはっはっ」
こうして、後輩を笑い壺にハマらせ、集中できる時間を確保した⋯⋯はずなのに、雷のことが気になってあまり進まない。
「別に」
「みょうじサンさぁ、正直雷苦手っしょ?」
「隠してるつもりなんだろうけど
バリバリ出ちゃってますよっ」
「そんなことな⋯⋯」
「⋯⋯⋯⋯」
また大きく雷の音が聞こえ、私は肩を震わせた。あーもう折角頑張って隠そうとしてきたのに。私が頑張った意味とはなんだったんだ?!??情けない姿を晒してしまい、そんな自分にやや嫌悪感を抱いた。はぁとため息を吐き、両手で自分の身体を抱いている私に飛んでもない言葉が降り掛かってきた。
「みょうじさん、抱きついていいですか?」
ナニイッテンダコイツ⋯⋯コイツって大切な後輩のことを高尾くんのこと心中で言ってしまった。ダメだな。私。というかさすがに冗談よねと高尾くんの顔を見てみると、真顔だ。え?
「⋯⋯⋯」
「ちょ、高尾くん」
「冗談です☆」
「そっか。冗談よね。良かった」
「⋯⋯⋯」
「え?」
「みょうじさんのバカああああ」
そう言って、彼は部室の扉を開けて、外に出ようとしたので、私は必死に止めた。
「ちょっ、早まらないで」
外は雨がすごい降ってて、しかも雷も落ちる可能性がある。非常に危険だ。
「みょうじさん、鈍感過ぎてオレやだ。全然気付いてくれねーじゃん。今日だってサ、オレわざとみょうじさんがいるから、残ったのに。さっきも『そっか。冗談よね。良かった』って⋯⋯ひどい。酷すぎる」
「――え?あれ本気だったの?」
「ガチで泣きますよ?」
「ごめん。とりあえず、部室戻って。ね?」
何とか高尾くんを部室に連れ戻したはいいものの、空気は最悪だった。
「良かったらプディッツ食べる?
新しい味のやつ」
「お菓子で機嫌取ろうとしてますよね?⋯⋯もらいますケド」
「私の気に入ってる味だから気に入ってもらえると嬉しいわ」
「うまいっす」
「良かった」
高尾くんは再び黙った。
「どうかした?」
「やっぱ抱きしめていいっすか?」
「何でそうなるの?」
しばらくそんなやり取りをしていた。私達が話しているうちに雷雨は落ち着いてきたような気がする。高尾くんと話しててもう怖さは大分和らいでいた。
「もうおさまってきたみたいね⋯⋯ってまた?」
どんだけ鳴り止まないんだ。怖いっと思った時、私の手を高尾くんが握ってくれた。
「え」
彼の顔は別の方向向いて見えなかった。あれ?耳真っ赤だ。
「ありがとう」
しばらく、その厚意に甘えることにした。高尾くんはいつもお喋りなのに、その間だけは何も話さなかった。
「やんできたし帰りましょうか?」
「手繋いで帰りません?」
「いいわよ」
「⋯⋯軽いっすね。オレ以外の男にも頼まれたら手繋ぐ系ですか?」
「今日、高尾くんが居てくれて怖いの軽減されたから、そのお礼のつもりだったんだけど。言ってたじゃない?わざわざ私がいるから残ったって⋯⋯」
私は言葉を紡いだ。
「今日は特別。嫌なら繋がないけど」
「そう」
「いや、繋ぎます」
「みょうじさん、好きです結婚して下さいっ」
「1段階飛ばしてない?」
こうして、私達は2人で部室を出て、手を繋ぎ、一緒に帰ったのだった。