※中原中也が上司で主人公が部下。酔っ払いに絡まれる主人公。
つんつん。つんつん。頬を指で突く彼。鬱陶しいったらありゃしない。イライラして私は奴をキッと睨んだ。
「やめて下さい。ぶち殺しますよ」
「そうカッカすんなよ。
こっえーな」
「……ココ、ワタシイエ。アナタノイエジャナイ。アーユーオケ?」
「カッタコトだな」
私が外国人風に話すと、隣で上司が馬鹿笑いしてきた。腹立つわ。家に入れなきゃ良かった……分からない人のためにも状況を説明しよう。今日、深夜にいきなり、私の家のチャイムが鳴ったの。こんな時間に誰だろと思ってドアスコープで覗くじゃん。そしたら、酔っ払った上司が玄関の前にいたわけよ。まじ有り得ないんですけど??はぁ??迷惑だし、そのまま放置したかったけど、仮にも上司だし酔っ払っているから可哀想じゃん。それで家に入れてあげた結果がコレだよ……害悪でしかない。タクシー、電話で呼んで、家に帰してもらおう。勿論、タクシー代は上司持ちで。でも、家知らないからなぁ。あーあ詰んだ。
「てか殺風景な部屋だな。
何もねーじゃねェか」
片付いててさっぱりした部屋って言えや。ぶっ殺すぞ。あなたを殺してインテリアとして置いたら、この部屋、殺風景な部屋じゃなくなりますかね?いや、それしたら本当に殺風景って言葉通りじゃん。ウケる……ウケねぇよ、はよ、家帰れ。フライパンおたまでカンカン叩いて、帰れコールしてやろうか?
「……」
私の家が何もなくて暇なのか、よく分からないが、じっと見つめれ、距離を詰められた。今度は何だろう?
「なんか用です?」
すると、彼は真剣な表情で言った。
「好きだ。だからやらせろ」
「……え?」
え?今、何て言った?本気でなんて言ったのか一瞬では理解できなくて、数秒経った今やっと意味を理解することができた。それ、そんな目で言うことか?脳がバグったじゃん。てか、やばい、やばい、やばい。ここにきて、まさかの貞操の危機?私の純血がああ。ちがう、純潔があああああ、うわあああ、簡単に家に入れるんじゃなかった。私の莫迦。逃げよう。でも、いくら距離を離しても詰められて、今、上司と鼻と鼻がぶつかりそうな距離だ。ひぃ。私は恐怖でぎゅっと目を瞑った。今日はなんて日なんだ。ああ、さようなら私の純潔。最初、服を脱がされるのかと思った。しかし、違って。はっと目を開けると、上司が目の前にいた。
「な、中原さん???」
澄んだ青い目が綺麗だなとそんなことを考えている場合ではない。私、今何されたんだ?頭を整理しよう。服を脱がされそうになってはいないし、ディープなキスを迫られたわけではない。さっき起こったのは、口と口と少しばかりぶつかっただけである。もしかして、これで終わり??私は心中で思いっきしガッツポーズを決めた。うおおおおぉ、やったあああああああ。私の貞操の危機回避。いや、でも、何かが引っ掛かる。どうしてだ???口と口がぶつかった???ってあれ、あれ、あれっ???……そんな戸惑っている私を見て、彼は満足げに笑った。
「へへっ。してやったぜ。莫ァ迦」
そして、彼は床に倒れたのだった。あれ?私なにか失ってない???