誕生日デート

一年に何回もある祝日。仕事がない至高の日。
灰獄千陽はいつものように惰眠を貪っていた。
玄関先からなる無機質なインターホンの音。しかし当の部屋の住人は気づくことなく寝ている。
音が波紋のように消えていく。
10秒後。
小さな金属音とともにガチャりと鍵の開く音が部屋に響く。ノックもせずに開けたドアの主はリヒト*R*C。
彼は脱いだ靴を綺麗に並べると迷いなくある場所に向う。
勢いよくドアを開けると夢の中へ旅をしてる千陽を容赦なく起こした。

「チハル!起きろ!!」
「んぇっ!?」

耳元で大声で呼ばれ千陽は飛び起きた。しかし声の主を見ると「なんだお前か」と言わんばかりの目をし、再び寝る体勢に入ろうとする。そんな千陽の行動はお見通しと言わんばかりにリヒトは千陽の肩を掴むとこう言った。

「デートするよ」
「……はぇ?」


一方その頃。千陽の双子の姉である白夢心陽はそわそわとスマホを置いてある机の前で正座をしていた。ピロリンと初期設定されている通知音がなる。心陽は落ち着かない気持ちでスマホ画面を見る。メールが1通。差出人は心陽の恋人である藤樹からだ。内容は「着いた」の1文のみ。
心陽は近くに置いていた鞄を取り部屋を出る。転ばないように階段を降り靴を履く。「行ってきます」と聞こえる声で言うと心陽は家を出た。

「そんなに急いで降りてこなくて良かったんだけど」

もしかして、待ち遠しかった?
ガードレールに腰掛けていた樹が笑いながら言った。
心陽はなんだか恥ずかしくなり「そうですけどそれがなにか!!」と半ばやけくそ気味に返す。

「なら、期待には答えないとな。お手をどうぞ」

樹は手を差し出す。心陽はおずおずとその手を取った。


年に一度の誕生日。特別な日をもっと特別に。



っていう感じのを書きたかっ……た。

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