マフィアパロ(鏡助)

俺たちはマフィアだ。

必要以上に殺しはしない。

敵でない以上民間人を巻き込むなんて駄目だ。

殺ってしまったら最後、俺はアルバに居られなくなる。

大きな窓から月明かりが差し込む。真昼の太陽ほど明るくはないが手元を照らすには十分だ。
与えられた部屋で1人、拳銃の手入れをしている。
屋敷内は皆、寝静まったのか静寂で充ちていた。

(今日はいい夜だ。)

手入れを終えたばかりの銃を月に向ける。月の光を反射して鈍く光る銃をじっと見つめた。
引き金を引けば呆気なく命を奪える道具。もちろん当たらなければ意味はないが。

(銃は嫌いじゃない。)

嫌いではない。
嫌いではないが、つまらない。

アルバやクレプスコーロの構成員は主に銃を使う。
射程距離を考えれば刀剣より身の危険が低い。戦場で身の危険などたかが知れてるが。
しかし、麒麟の連中の戦いぶりを見るとどうも羨ましくてかなわない。
身の危険を顧みず、敵陣に突っ込み相手の体を切り裂くのはとても楽しそうだ。
身の内に潜む狂気に全て委ねてしまえばきっと戻れなくなる。

「それだけは駄目、だな。」

銃を置き、片付けをする。
机に置いている写真立てを見た。
ふっと、口元が緩む。

「……兄さんを置いては、いけないな」

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