08
「初めまして。相澤消太の甥、相澤止です」
あまりにも整った顔立ちに、きっと自分とは違う生き物なんだと思った。後に緑谷はそう語る。
「…、お、甥ーーー?!」
「こ、このイケメンくんが、相澤先生の甥?!」
「嘘だろ?!全然くたびれてないし小汚くないじゃん!!」
「おいそれはどういうことだ上鳴」
「ぐえっ」
「まぁまぁ相澤くん、落ち着いて」
一言多かった上鳴が相澤の捕縛布によって絞められる。それを宥めるオールマイト。なんとも奇妙な光景だ。
「…止は正真正銘、俺の甥だ。雄英の生徒ではないが今回特別に許可を貰って授業に参加してもらった」
「騙すようなことをしてしまってごめんなさい。消太さんに敵感を出す為にも喋らないように、と言われていて」
フン、と何故か高姿勢な相澤と、申し訳無さげに眉尻を下げる止。名前で呼び合うとか夫婦かい。思わず麗日は心の中で突っ込みを入れた。
「オールマイトも、このことはご存知だったんですか」
「勿論さ。事前に相澤くんから聞いていたからね。それに、止くんは以前からの顔なじみだから、安心して君たちの相手を任せられたよ!」
ポン、とオールマイトは止の肩に手を置く。オールマイトの顔なじみ発言に生徒たちがざわつくと、オールマイトは一瞬固まり、そしてしまったと言わんばかりの顔で相澤と止を見た。相澤はこめかみを押さえながら深くため息を吐き、止は苦笑している。
「オールマイトさん…」
「ご、ごめん相澤くん!ついうっかり口が滑ってしまった!」
「ハァ…。えー、オールマイトさんの言う通り、止は技術向上の為、不定期に雄英で俺やオールマイトさん、その他教師陣や上級生と修練を行っている。勿論校長からは許諾を得ている」
それだけだ。以上、解散。有無を言わせない相澤の態度に、生徒たちはそれ以上発言ができなかった。
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「いやー、まさか相澤先生の甥があんなにイケメンなんてな!」
「しかも強かったし!俺なんて一瞬でやられちまったよ〜」
「あの縄、俺の硬化でも全く千切れなくて参ったぜ」
授業後、更衣を終えた生徒たちは教室へ戻るべく移動していた。そこで交わされる会話の話題は専ら止についてである。誰もがその容姿の良さや強さを称賛する中、爆豪はひとり苛立ちを募らせていた。あの時、個性を使われ動けなくなっていた爆豪を捕まえるのは造作なかったはずだ。それなのにアイツは、止は、爆豪を捕らえなかった。それが酷く腹立たしかった。
(半分野郎といい、アイツといい、舐めプしやがって…!)
ぎりりと噛み締められた奥歯が鈍く痛んだ。