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相澤先生の甥、相澤止くん。彼は以前から雄英に来て特別に校内の施設を利用したり、プロヒーローでもある先生たちと戦闘訓練をしたりしていたらしい。基本的に校内には部外者は入れないはずなのだけれど、そこはやっぱり相澤先生の力添えなのだろうか。まぁここの校長先生ちょっと変わってるし、あまり深い意味合いはないのかもしれない。それよりも彼の強さは本物だった。一体いつからヒーローを志しているんだろう。どんなトレーニングを、どんな訓練を…!

「デクくん、デクくん。また出とるよ」
「はっ!!ご、ごめんね麗日さん!うるさかったよね…!」

麗日さんに声を掛けられ正気に戻る僕。ああ、またやってしまった。しかも麗日さんの前で…恥ずかしい。

「ええんよ、気にせんとって!もしかして相澤先生の甥っ子くんのこと考えてたん?」
「うん、彼すごく強かったから、一体どんなトレーニングしてるのかなって」
「ん〜。やっぱり相澤先生が直々にやってるんちゃうん?戦い方も似てた気ぃするし」
「!!やっぱり似てたよね!そう思ってたの僕だけじゃなかったんだ!」
「似てた似てた!あの縄みたいなんとか!」
「あれは相澤先生の捕縛布に影響を受けてると思うんだよね。あとは彼の個性…」

そう、彼の個性。かっちゃんが彼に襲いかかって行ったとき、急に身体が動かなくなって声も出なくなった。それは僕だけでなく少し離れたところにいた轟くんや、勿論かっちゃんもだ。恐らく相手の身体の自由を奪うタイプの個性で、一対一ではなく複数人に対して同時に発動できるのだろう。発動時に特に目立ったモーションは無かったけれど一体いつ発動したんだ?発動条件は?インターバルは?解除方法は?

「デークーくーん」
「はっ!!!」
「デクくん、甥っ子くんのことが気になってしゃーないんやね」
「あ、あはは…」

またやってしまった…!せっかく麗日さんと2人きりで下校(飯田くんは委員会、轟くんは用事があると急いで先に帰ってしまった)なのに僕ったら…!麗日さんはあまり気にしてないみたいで、いつも通りの柔らかそうな顔でにこにこしてくれているのが救いだ。麗日さんは本当に優しいなぁ。

「あ、そうやデクくん。私ちょっと買い物して帰りたいんよ。かまへん?」
「勿論いいよ!何を買うの?」
「新しいランニングシューズが欲しくて。もうボロボロやねん」
「じゃあスポーツ用品店だね!この辺にあったかな」
「さっきスマホで調べてみてんけど、あのショッピングモールになかなか評判ええとこ入ってるんよ」
「そうなんだ!じゃあそこへ行こう!」

こうして僕と麗日さんは、帰り道から外れたショッピングモールへと寄り道することになった。