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日焼けしてる種ヶ島(tns)

プラスタグSS

***
 入江って、テニス部のくせに肌白いよなぁ。
「せやな。でも特別なケアとかはしてへんのやて」
「嘘だぁ」
「お、奏多のマネ?」
 会話が二往復してようやく、はたと隣を見ると、当然種ヶ島と目が合った。
 休日、学校のテニスコートの振りわけは午前が女テニで午後が男テニで固定されている。帰り支度を済ませ給水機にがっついていた私とはうらはら、彼は今から練習なのだろう。ラケットを手にうんと伸びをしている。
「心の声に返事するのやめて」
「ちゃい☆」
 雑な誤魔化しを無視して空を見上げれば、太陽が雲を押し除け空のど真ん中を陣取っている。午前中の時点で、日が高くなるにつれてジリジリと肌が焼ける感覚も増していただけに、午後練は美白に響きそうだ。
 会話が止んでなお種ヶ島はコートに向かわず、念入りに柔軟に取り組んでいる。頭を左に倒したことで見やすくなった首筋は、さっきまで眺めていた入江とは違い、屋外運動部然として浅黒い。それが、何回ブリーチしたのか分からない白い髪がよく映えていた。夏を人型にしたら丁度こんな姿になりそうだ。まぁ、彼は冬でも変わらないけれど。
「種ヶ島の肌って日焼け?」
「気になるん?エッチやなあ」
「なんで?」
「脱いでって意味やろ?」
「じゃ私帰るね。お疲れー」
「待って待ってごめんて!ジョーダンやて!」
 苦笑いで私を引き止のた種ヶ島は大きな背を丸めてしゃがみ込む。まばゆい色のわりに傷んでいないように見える頭を見下ろしているのは何だか変な感じ。落ちつかないので、マネして隣にしゃがみ込むと、くるぶし丈のくつ下を押し下げた彼は「ホラ、見てみ?テニス部特有のくつ下二段構えやで」なんておどけて、くっきりついたくつ下焼けを見せつけてきた。意外にも地肌は、血管が透けて見えるほど白い。
 くつ下焼けなんて、テニス部からしてみれば珍しくも何ともないし、なんなら私とだってお揃いなのに、どうしてだろう。イケナイものを見た気分だった。
 足元が再度整えられていくのを尻目に、私、やっぱりエッチかもなあ……なんて頭の悪い感想が思い浮かぶ。……いやいや、なにバカなこと考えてんだか。
 かぶりを振って膝を支えに頬杖をつき、視線を上げれば白い猫毛の隙間から双眸がこちらを窺う。バチリ、と音を立てて目が合った瞬間、「せやな。でも俺は大歓迎やで」と、やはり種ヶ島は私の心の声をピタリと読み当てた。



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