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種ヶ島と七夕の空(tns)

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珍しく晴れたなあ…七夕の晴れって何年振りだろう?もっと光が少ない場所へ行けば、さらに溢れんばかりの星々が瞬くのだろうが、ベランダから見上げた夜空もなかなかの美しさだった。あれが川だとするならば、確かに鳥のかけはしでもなければ超えられなさそうだ。
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ベランダで夜空を見上げながら恋人達の逢瀬に思いを馳せていたところ、スマホの着信音で現実に引き戻された。はてさて、ヨーロッパとの時差はどれくらいなんだっけ。確か経度が135度違うから……。結局、計算途中なのに飛びつくように通話に応じたため、きちんとした結果は出せず終いになった。
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「ちゃい☆」オレオレ詐欺よりよっぽど不親切な開口一番を聞いて、その元気さに安心する。向こうでの活躍は聞き及んでいるが、声が聞けると嬉しさもひとしおだった。「どうしたの、急に」「いやな、カレンダー見たら今日、7月7日やってん。恋人の日やろ?自分寂しがっとるやろなー思うて」
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「ふーん」「あら?七夕、興味なかった?」星とか好きやなかったっけ?と疑問符が続く。高校生の頃一緒に、プラネタリウムを見に行ったり、流星群を見るため長電話したことを指しているのだろう。私が星好きというのは、半分だけ当たりだ。実は、修二と一緒に星を見るのが好き、というのが正しい。
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「修二さぁ、そっち今何時?」「んー?16時くらい」「一番星見えたら、もっかい電話して」「そんなんそっち、朝方やろ」面食らったような声。珍しく、私が彼の想像を超えられたようだ。驚いた顔を見られないのがちょっとだけ残念だが、仕方ない。私たちの間に鳥のかけはしは掛からないから。
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「それでも、電話して。恋人の日だから、修二と星が見たいよ」時差8時間は超えられないけれど、せめて同じ空を見上げられたら。らしくない台詞を笑われるかと思ったけれど、彼は私のお願いをひとつ返事で聞き入れた。「あーあ、今すぐ俺らの間にも橋がかからんかなあ」
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心底残念そうなため息が聞こえる。そしたら飛行機にも乗らなくて済むしね、なんて茶化すのはやめておいた。今回ばかりは、私も同じ気持ちだったから。



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