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仁王と荷造り(tns)

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明日から友達と旅行。楽しみだけど荷造りは面倒くさい。あーあ、荷物ぜーんぶキャリーに勝手に入ってくれないかなー。なんて現実逃避しながらソファに身体を投げ打つ。ごろり。なんかこのまま寝ちゃいそう。気持ち良くうつらうつらしていた私の鼻を摘んで、「おはようさん」とニヤリ笑うのは
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当然この家のもう一人の住人。風呂上がりで濡れた髪はいつもと違ってしんなり重力に負けていて、彼を少し幼く見せていた。まあ、私にくだらないちょっかいを掛けるのだから、そもそも子どもみたいな部分あるんだけど。「ねー、私、今気持ち良く寝ようとしてたんだけど」「荷造りは?」
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「……オワッテマセン」ちょっと偉そうなことを考えていた私は、彼の正論に沈む。見事な一発KO。仁王の肩越しに見える時計は22時を指し、さらに追い打ちをかけてくる。明日は朝も早いのだからそろそろ本格的に起き上がらねばマズイ。分かっているけど、やっぱり腰が重かった。
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「めんどくさ〜い!代わりに仁王がやってくんない?」「……ほう、良いんか?」いまだ寝そべったままの私を見下ろす顔は、明らかに何かを企んでいる表情。これ、丸投げすると面白くも、何かとんでもないことが起こるだろうというのは、これまでの付き合いで嫌というほど分かってる。
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「あ、イヤ。やっぱ良いです。自分でやります」言いながら足で弾みをつけて起き上がると、いつの間にか足元にはキャリーケースが置かれていた。持ってきてくれていたらしい。「持ってきてくれてありがたいんだけど、もうひとつ小さいやつを持って行くよ」
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「荷造り丸投げされたら、俺がこれに入って旅行に着いて行こうかと思ったんじゃけど、残念」あー残念残念と肩をすくめる彼の口角は相変わらず楽しそうに引き上げられていた。「あはは!やめてよ、怖すぎ。開けてびっくりしてひっくり返っちゃう!」どこまで本気なのかは定かではないけれど、
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そのシチュエーションを考えると自然に私の口角も上がった。存外荷造り頼んでみても良かったかもな。いつの間にか思考が似てきたことにも気づかず、自分の選択を少しだけ悔やみながら私はようやく重い腰を上げた。



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