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大曲とたい焼きを食べる話

プラスタグSS

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「良いもん食ってんじゃねえか」
「あ、りゅうじ、おつかれ」
「口に物入れたまま喋んなし」
 試合終わりの竜次に手を振ると、至極もっともな指摘を受けた。気を取り直して口の中のたい焼きを飲み込んで再度お疲れ様と声をかければ、今度は満足げに頷かれた。
「俺の分は?」
「試合終わりなのにこんな重いもん食べたいの?」
「買ってくれてねぇのかよ」
「これ食べる?」
 大人びて見えるのに、がっかりしている姿には高校生らしさがあった。可哀想なので食べかけのたい焼きを差し出すと、竜次はそのまま一口を奪っていった。もぐもぐ咀嚼しながらだんだん眉間に皺が寄る。想像通りのリアクションに笑いを堪えていると、一口をきちんと飲み込んだ後、彼は口を開く。
「何味だこりゃ」
「アップルチーズクリーム。期間限定だって」
「……邪道だし」
「不味かった?」
「いや美味えけどよ、たい焼きと言や……」
 晴れない表情にこだわりの大きさがうかがえた。
 私はとうとう堪えきれず笑い声を上げてしまい、早々のネタバラシとなった。
「あはは!あんこだよね。はい、竜次の分」
 くどくど言い出しそうな竜次の言葉を遮るように、温もりの残る紙袋を押し付ける。片眉を上げ中身を確認した彼は、嬉しそうに頬を緩めた。
「あるならそう言えし。ありがとよ」
「竜次の分買ってないとは言わなかったよ」
「ああ言えばこう言うなお前は……」
「キライになった?」
「いや、可愛いから許すわ」
 誰に教わったのか、意地悪に対して予期せぬカウンターを受けた。すっかり気を抜いていた私にクリティカルヒット。思わず咳き込むと「そういう顔もできんだな」と言って竜次は笑った。



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