
ハンドクリームを戴く種ヶ島
プラスタグSS
「どないしたん」
手を体の前で持て余し、さながらオバケのようなポーズをとる私を見つけた種ヶ島は訝しげな表情をして近寄ってくる。そして不自然に白い私の手へしばし視線をそそぐと、おかしそうに口角を上げた。
「えらい美白やん」
「まあ、それほどでもあるかな。なんにも触れないモンスターでもあるけど」
ハンドクリームを出しすぎたゆえの、ベタベタで真っ白な手を見せびらかすように伸ばせば、種ヶ島は「そら可哀想やな」と笑ってブレザーに触れられるのを上手に避けた。
残念、失敗だ。
「可哀想と思うなら悪いんだけど、私の袖上げてくれない? 腕まで塗り広げたら何とかなりそう」
人の制服に擦りつけるのを断念した私のささやかなお願いを、しかし彼は受け入れなかった。
「そんなん勿体無いわあ。ええ匂いやし、お裾分けしてもらったろ!」
そう言うや否や、その手が触れた。日焼けなのか元からなのかは知らないが、私とは違って健康的な小麦色が指の間にまで絡む。
ウッと驚いて後退りすると、その分、したり顔の種ヶ島が距離を詰めた。まるで暖を取るかのようにじっくりとお互いの手を擦り合わせ、最後に名残惜しそうに一度両手を包まれ、ようやく解放された。
あたりにはお気に入りの柚子の香りが充満し、私の肌はモンスターから普通の色に戻っている。
「自分手冷たいんやな。あったかくしいや」
「え、何今の。モテテク?」
「ちょい違うわ。好きな子に意識してもらうためのテクやな⭐︎」
とびきり綺麗にウインクした種ヶ島に、かろうじて「アホか」と答えたもののさっきの熱を忘れられず手は赤くほてっている。