Short short

image

弥鱈立会人とゲームでも知り合う(usgi)

※台詞前の「あー…」が好きすぎるのテンプレ
3.気まずい

***
振り返ってみればフレンドは、これから紹介したい相手について「上司のコーヒーがすっごい不味いらしくて!」と妙にピンポイントな情報を口にしていた。その時点で気づくべきだった。この島まで来てわざわざリアルの話をしてしまうほどのインパクトがあるコーヒーを生み出す人間など、そうそう存在するわけないことに。
同じ高レベル帯プレイヤーとして紹介された“ダミアン”さんを見て一瞬気が遠くなりかけた。髪型や服装こそ違えど、唾でシャボン玉を作るような人間を私は一人しか知らない。目の前に立つ猫背の男は、紛れもなく同僚だった。
親切心で私たちを繋げたフレンドは、何やら別のクエストがあるとかで早々に席を外してしまい、残されたこの場にはただひたすら気まずい空気が流れている。
「……初めまして。み、だ…ダミアンさん」
「あー…ハイ。どうも」
合わない視線、弾まない会話。立会人の仕事は好きでやっていることだが、それはそれ。非現実を求めてやってくるこの島で知人と顔を合わせるのは特に望んでいない。こんなミラクルやってられるか。
「……ダミアンさん、今日のことは無かったことにしませんか。なんか気まずいですし。彼にはお互い気が合わなかったと説明しておきますので。それでは」
一方的に捲し立ててその場を去ろうとすると、彼は実に立会人らしい人間離れした俊敏さで私の行く手を阻んだ。
二の腕に指が食い込む。失礼な態度が癇に障ったのかと冷や汗が流れるが、当の本人はいつもと大差のない涼しい表情を保っていた。
「勝手に話を進めないでくださいー。貴女、ステ振りとスキル的に普段ヒーラー役をやっているとか」
「まあ、そうですけど……」
そもそも今回の紹介のきっかけはお互いが同じクエストに苦戦していたことにある。火力のあるアタッカーのパートナーが欲しかった私に対し、向こうは支援特化のサポーターを欲していたと聞いている。
「まさか、」
「他に人を探すのも面倒ですし、利害は一致しています」
「プライベートで同僚と顔を合わせることに抵抗ないんですか?」
「人によります。まあ、貴女なら良いかなと」
「……そうですか」
悪い気はしない言葉に言いくるめられ、私は弥鱈さんと秘密を共有するようになった。そして数日もたたないうちに、ただの同僚から同じ趣味を持つ友人へ関係が上書きされることになる。

ちなみに、この“偶然”が実は全て彼によって仕組まれていたと知るのは、もう少し先の話だ。



夜道