Short short

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荒船くんの映画布教(wt)

※台詞前の「あー…」が好きすぎるのテンプレ
※高嶺の花の番外編
※本編読んでなくても大丈夫です
7.悩む

***
「荒船くんが一番好きな映画タイトルって何?」
ずっと気になっていた質問を投げかけると、荒船くんは腕を組んで熟考の姿勢を取った。ただの雑談なのに大真面目な顔。好きなことに一直線なのは疑いようもなく長所と言って良いだろう。
私の質問に誠実に答えようとしてくれているんだなと感じられるこの待ち時間が、結構好きだなと思う。
「一番? あー…ソードアクション系ガンアクション系カーアクション系、その他でもいいが、どのジャンルの話だ?」
「全部ひっくるめてだよ」
アクション中毒者ならではの返答に笑いながらそう返すと、彼は眉間に皺を寄せますます苦しそうな表情を浮かべた。
「全部、全部か……難しい話だな、それ」
そうして悩み抜いた挙句荒船くんが捻り出したのは意外にも誰もが知るビッグタイトル。昔から続くシリーズもので、ジャンルとしてはアクションよりSF寄りなのではないだろうか。
「へえ、ちょっと意外かも。もっとコアな作品を挙げると思ってたな」
「そういうのも好きだけどな。でもガキの頃に見たものが強烈に記憶に残ったりするだろ?」
自分にも心当たりがあったので、納得して頷いた。
小さい頃、と限定しなくても荒船くんにおすすめされた映画や一緒に見た映画は特に好きになったものが多いし、思い出補正というのも大きいかもしれない。
「なるほど。ま、実は私、ソレ観たことないんだよね。悪役の正体だけは知ってるけど」
「ネタバレを見んな。つーか本編見たことねえのか…。何なら今からウチで観るか?」
タイミングよく分かれ道に差し掛かっている。このまま直進すれば私の家、右折すれば荒船くんの家に着く。いつもなら二人で直進し、男前な彼が私を家まで送り届けてくれるところ。
荒船くんの家にお邪魔した経験は何度かあるけど、まだ少し緊張はする。そういう初心な間柄。
「……変なコトしない?」
「馬鹿、お前が嫌がるようなことするわけないだろ」
すかさず拗ねたようなツッコミが差し込まれた。私よりうんと大人びて見える彼の、少し子どもっぽい顔は可愛くうつる。
「冗談冗談、お邪魔でなければ行かせてください。荒船くんの好きなもの、沢山教えて」
そう言って彼の手を引き導くように右折すると、斜め後ろからは「そういうこと俺以外に言うなよ」なんてため息混じりの声がした。



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