24話 沖縄1日目A
24話 沖縄1日目A
「おっせぇな、アイツら」
「まあ、女性の着替えは時間がかかりますから」
エメラルドビーチの更衣室……よりほんの少し離れた場所で僕達は女性陣を待っている。
「それにしてもお2人はいい身体してらっしゃいますね。何かスポーツやられてます??」
「ん?ああ、俺達は空手やってるから」
「雅は陸上もやってたしな」
無駄な脂肪は一切付いていない、秋斗さんと雅さんの逞しい筋肉質な身体は男の僕達でも惚れ惚れする。
僕も鍛えようかな……。
そんなやり取りをしていた時。
「あの〜……」
「「「「え?」」」」
「きゃっ!やっぱり全員かっこいい!!」
2人の水着姿の女性が僕達に話しかけてきた。
雰囲気的に僕ら同様、観光客だろうか。
というか、あれ?これはもしかして。
いやいや、僕には関係ないな。
『全員』に僕はきっと入ってないない。
「あの〜、もし良かったら私たちと一緒に遊びませんかぁ?」
まさかのナンパだった。
まあ、お兄さん達かっこいいしなぁ。
そんなかっこいいお兄さんの1人、秋斗さんがいやらしくにやりと微笑んだものだから女性達は頬を赤らめた。
「悪ぃけどオレはコイツでしか勃たないから」
「「え?」」
「ちょっと、秋斗!?」
「じゃあ、オレらは先に場所取りしてくるわ〜」
「わっ、ちょっ、待って!!引っ張るな!!」
爆弾を投下して、秋斗さんは自分の恋人を引っ張っていく。
雅さんが少し嬉しそうにしたのを僕は見逃さなかった。
「え、あ、あの2人って……」
「彼らはそういう関係ですよ」
「え、すご!!生で初めて見た!!」
「イケメン同士だし萌える!!」
「「萌え……??」」
拓也さんが事実を女性達に伝えてやると、彼女達はきゃあきゃあと嬉しそうに騒ぎ出す。
どうやら彼女達はそういうお話が大好きらしい。
そんな2人の標的が僕達になる。
「じゃあ!じゃあ!お2人もそういう関係なんですか?」
「え、いや、僕達は……」
「よかった!!私は君が1番気になってたの!!」
「え?!ええ?!」
「おやおや。モテモテですね洵くん」
衝撃の出来事に僕は困惑した。
いやいやいや、どうせまた罰ゲームだろ!
そうに決まってる!!
ちなみにもう1人の女性は拓也さんに夢中だった。
「ね、ね、一緒に遊ぼ!!」
「え、いや、あの、ぼ、僕は……」
ぐいぐい距離を縮めてくる女性に困惑していると後ろから腕が伸びてきて僕を捕らえる。
鼻腔に愛おしい香り。
「悪いけど、コイツ俺のだから」
「……春樹」
「この人は私のだよ」
「おや、泪。見てたんですか?」
僕達の彼女様達が女性達に威嚇すると、2人は「ほらぁ、美形なんだから恋人いるっていったじゃん!」「残念ー!でも、美男美女だよね!仕方ないか」と言い合い去っていった。
「とうとう洵もナンパされたか」
「どうせ罰ゲームでしょ」
「いや、あれは本気の目でしたよ、洵くん」
「……趣味が悪い」
「俺は趣味悪くねぇよ」
「いひゃい!」
春樹は僕の頬を抓る。
ホントに痛い。
「泪、可愛いですね!良くお似合いですよ!」
「さっきの子より可愛い??」
「ええ。雲泥の差、ですよ。ふふ」
「ふふ、よかった」
隣でバカップル3号の2人がイチャイチャしてるのもお構いなしに僕は春樹をじっと見る。
黒のビキニとショートパンツの上に、黒のレースのシフォンコート。
お腹の根性焼き痕はシフォンコートで隠れて目立たない。
隣で彼氏の拓也さんとイチャイチャしている泪さんはこの色違いの白の水着だった。
何も言わない僕に春樹は不満をぶつけてくる。
「……なんか言えよ」
「やっぱり黒が似合うね」
「スケベ」
「凄い可愛い」
「は、はぁ?!か、可愛くなんかねーわ!!」
春樹は直ぐに手が出る。
でも、照れての事だって知ってるし、多分手が出るだろうなと構えてたから僕は避けた。
「もう、すぐ叩かないで」
「……避けんなよ」
「やだ。痛いのヤダもん」
そんなやり取りをしていると、泪さんが、すっと春樹に抱きつく。
「洵、私に感謝してよね?選んだの私なんだから」
「ありがとう、泪さん。今度何か奢るね」
「やった!」
僕達は明日の美浜アメリカンビレッジでの昼食で手を打った。
「秋斗さんと雅さんは……ああ、いましたね」
綺麗なビーチを見渡すとシーズンだけあって結構人がいる。
その中にビーチ3点セット(パラソル1個とビーチベッド2個)を3組、セッティングしていた元祖バカップルさんがいた。
『眺めの浜』と言われる側のビーチにしたようだ。
名前だけあって、本当に眺めがいい。
他にも左右に、浜の全長の長い『遊びの浜』、続いて広い『憩いの浜』がある。
『眺めの浜』は浜の全長は短いが突出しているために眺めがいい。
「秋斗、雅。サンキュ!」
「おー。……おー、馬子にも衣装だな」
「……てめぇ、しばかれたいか」
「素直に似合ってるって言えばいいだろ」
「るっせぇ」
春樹の水着姿に秋斗さんはなんだか居心地が悪そうだった。
それから浮き輪を膨らませたり、また日焼け止めを塗ったりしてから、僕と春樹、拓也さんと泪さんは海に出る。
秋斗さんと雅さんはパラソルの下でゆっくりしながら荷物番をするからと言い、その場に残った。
僕達はそれぞれパートナーと一緒に海に入っていく。
「すごい!!凄く綺麗だね!!」
「だな!!うお!!あはは!!」
春樹と手を繋いで、透き通る沖縄の綺麗な海に足を浸ける。
凄く冷たいというわけではないけど、心地いい冷たさ。
膝まで浸かると、春樹は僕の左手首がいつもと違うことに気づく。
「あれ?リストバンドいつもと違うな?」
「うん、春樹から貰ったのは濡らしたくなかったからね」
でも、傷痕は隠したかったから仕事帰りに近くの雑貨屋で買った。
「ふーん??ふふ。おりゃっ!!」
「え?……うわっ!!」
春樹が突然全体重を僕に預ける形で抱き着いてきて、僕は思わず春樹を抱えたまま海に尻もちをつく。
海水が口に入って、しょっぱい。
「……もう、なにするの」
「んー?ふふふ!!なんとなく!!」
「なんだよそれ」
「ふふふ!おりゃ!!」
「わっ!!ちょっと!!」
今度は海水をバシャバシャと僕にかける。
僕は呆れながらも、春樹が楽しそうだったからもうそれだけでよかった。
僕は、笑顔の春樹が、大好きだから。
それから水を掛け合い、しばらくしてもう少し先に進んで、今度は胸近くまで浸かる。
僕はあんまり泳げないから不安だなぁ。
「これ以上は無理」
「あんま泳げないんだっけ?」
「うん」
「……怖い?」
「……怖くない」
「ふふ、洵くんは怖がりだなー!!」
むくれる僕に対して、春樹は楽しそうにニヤニヤして、僕に浮き輪を渡してくる。
「俺は泳げるから」
「……かっこ悪い」
「溺れるよかいいだろw」
僕達はまた少し進む。
春樹となら何だってできる気がした。
浮き輪の輪っかの中に僕が収まって、その浮き輪の端を春樹が掴んで、ぷかぷか浮く。
「春樹、大丈夫?」
「俺、体育5だぞ」
「凄いね」
「まあ、他の教科も大体5だったけどな?」
「え、凄くない?才色兼備じゃん」
春樹は「美術は悪かったけどなー」と笑った。
「高校の時、新入生代表もしたしな」
「え、僕、そんな凄い人と付き合ってるの?……でも、今の感じからは想像できない」
「うるせぇわw」
僕は、もっと春樹を知りたい。
「ねぇ、また色々春樹を教えて?」
「大体話したぞ?」
「もっと知りたい」
「強欲。……あ、1つ教えてやることあるわ」
「??」
春樹は軽く僕に口付ける。
しょっぱい。
そして僕に優しく微笑んだ。
「……なに?」
「私はお前を死ぬほど愛してる」
「……死なないでよ」
「喩えだろ」
僕達は海に浮かびながらまた口付けする。
そして、しばらく浮かんでいてから名残惜しく思いながらも海から上がり、秋斗さんと雅さんの元に。
「おー?海でチュッチュッしてたバカップル上がってきたか」
「うるせぇわ。つーか、お前何処のセレブだよ」
「セレブというかヤクザだと俺は思う」
「お前覚えとけよ」
サングラスをかけてビーチベッドに寝転がる秋斗さんは、セレブのような、ヤクザのような……。そんな風貌である。
「あ、海でイチャコラしてたバカップル上がってきたんだ?」
「……イチャコラして悪いか」
「あー、はは……」
ソフトクリームを食べながらやってきた拓也さんと泪さん。
めっちゃ見られてた……。恥ずかしい……。
暑いなー。日差しのせいかなー??
「洵、俺もソフトクリーム食べたい。買いに行こうぜ」
「あ、うん」
「ソフトクリームならそこの売店?屋台?で売ってたよ」
「ん、サンキュ」
僕達は売店に向かう。
そして、ソフトクリームを買って、食べながら皆の元へ。
厳しい日差しで暑い中、ソフトクリームの冷たさが身体の火照りを冷やしてくれる。
「洵」
「うん?」
「楽しいな、沖縄」
「うん!」
「ふふふ!沖縄サイコー!!」
本当に来れてよかった。
しばらくビーチベッドに座り、綺麗な海を眺めながら雑談する。
明日のプランなんかも相談する。
そして、また海辺を散策したりして、ちょっと空が赤く染まってきた頃、僕達はホテルに戻った。
ーつづくー