番外編9 美浜アメリカンビレッジ〜ホテル 秋斗×雅編

番外編9 美浜アメリカンビレッジ〜ホテル 秋斗×雅編


2組のカップルと別れて、秋斗と雅はジャッタバーガーがあったビルの隣のビルに移動する。
彼らも目当ての店はリストアップしてあった。
手を繋ぐ。でもそんなにベタベタしてる風ではなく、程よく距離がある。緩く、繋ぐ。人差し指と、人差し指を、絡ませる。

ペタルーナというオーガニックアロマのお店に入り、物色。
秋斗がアロマオイルにハマり、この間アロマディフューザーを購入していた。

2人で相談しながら選び、沖縄らしいシークワーサーのアロマオイルをカゴに。

そして秋斗が何かを見つけ、雅の腕を上機嫌に叩く。

「なあなあ、これ買おーぜ」

「なに?」

「イランイラン」

「馬鹿なの?」

イランイランがどういう効果を持つものか雅は知っていたので思い切り呆れてやる。
でも秋斗は引き下がらずカゴにそれを2個投入。
呆れてものが言えないが、ただ、雅自身もその効果には興味があったのでレジに持っていく秋斗を止めはしなかった。

そのアロマオイルの店を出て、またビルを移動し、革製品のお店に入り、鍵に付けるためのキーホルダーをお揃いで購入する。

またホテル帰ったら付け替えよーぜ!!と上機嫌で笑う秋斗に愛おしさが募る。
ああ、好きだな、なんでこんなにも好きなんだろう。
秋斗だから、好きなんだ。

そしてまた移動する。

しかし、その途中、楽しい夢から覚める声が聞こえてくる。

「……ねぇ、あの2人、手繋いでない?」

「どれ?」

「あそこの男2人」

「げっ、ほんとだ……」

気持ち悪い。

雅は、さぁっ……と血の気が引いた。
やっぱり自分たちは『普通』ではない。
ああ、なんであんな声に気づいてしまったんだろう。
幸せな時間だったのに、急に現実と向き合う羽目になって、息ができず何もかもが嫌になる。

女になれたら、いいのに。

そして、敷地内の隅にある建物の洋服屋に入る。

「これとこれどっち?」

「え……、うーん、こっち」

「だよなー!」

秋斗が楽しそうにしているのが何よりの救いで、雅は何かに縋りたくて、秋斗が購入した洋服の色違いを1着買う。

隠しているつもりでも雅は分かりやすくて、浮かない、泣きそうな顔になっていることに秋斗はすぐに気づいた。

その建物の同じ階のギャラリーに入る。
幸い、客は誰もいない。

「どーした」

「……なにが?」

「泣きそうじゃん」

困ったように笑う秋斗。
ただその顔を見ていたくなくて、雅は秋斗の肩に頭を預ける。
本当にもう泣きそうだった。

秋斗の手をキツく握ると、秋斗はキツく握り返してきて、彼は雅の頭を空いた方の手で撫でる。

「……どーしたよ」

「……俺が、ほんとに女ならいいのに」

「……なんかあったのか?」

「……気持ち悪いって、聞こえてきた……」

秋斗はその声に気づいていなかった。
こいつは敏感だからな、と優しい手つきで頭を撫でながらぐずる雅をあやす。

「……確かに、『普通』の奴らからしたら気持ち悪いかもな。でも、オレらはオレらだろ?オレらがずっと一緒なのはこれからもかわらねーし、そんなん無視したらいいよ」

「……うん」

「受け入れてくれる奴の言葉だけ聞いとこうぜ。今は特に、な」

「……うん」

「大丈夫。オレはお前をずっと愛してるから」

「……ん」

大丈夫だと頭を撫でる秋斗のその言葉達に救われた気がした。
それからは人差し指だけでなくお互いの背中に手を回し寄り添い合い歩く。
嫌悪を含んだ視線が刺さったが、もう大丈夫。
また落ち込むことはあるかもしれないけれどとりあえず、今は大丈夫。

「はー、ねっみい」

「今日も運転お疲れ様」

「明日は代わってもらお……」

ホテルに帰って、夕飯を食べてからベッドフレームを背に座っている雅の腰に秋斗が抱きついて疲れを癒す。

目をしょぼしょぼしている恋人の頭を撫でる。
秋斗は気持ちよさげに目を細めた。

「あー、寝そ」

「風呂入らないと」

「……一緒がいい」

「バブかよ」

「ばぶ〜」

「あははっ」

ふざけて頭を雅の腰にグリグリと擦り寄せる秋斗。
雅はそれがくすぐったくて、赤ん坊のようになった秋斗が可愛くてくすくす笑う。

もう昼間の事件なんて忘れていた。

「わかったから。早く入って寝よう」

「ん」

2人は寄り添い合い風呂に入って、また抱き合って同じ幸せな夢を見た。


ー番外編ENDー