30話 沖縄土産でどんちゃん騒ぎ
30話 沖縄土産でどんちゃん騒ぎ
旅行から3日して、僕と雅さんと、«sins»と«ジェミニ»のみんなは僕と春樹の部屋で沖縄土産を広げて宴会をする事になっている。
家宅捜索される恐れを察知して、事後のティッシュゴミとかはちゃんとゴミに出しておいた。
あとは別に危ないものはないし大丈夫だろう。
午前11時。
ピンポーンとインターホンがなる。
飲み物とピザを持ったみんなが揃ってやってくる。
「「「お邪魔しまーす!」」」
「どぞ。靴入らなかったら靴箱の上にでも置いて下さい」
春樹がポテトサラダを作って盛り付けていたので僕が出迎える。
やはり人数が多いのでギリギリ靴が入り切らなくて最後に入ってきた皐さんが靴箱の上に申し訳なさそうに靴を置いていた。
ぞろぞろ入っていき、リビングに。
「春樹さーん!!」
「いらっしゃーい!」
「お、ポテトサラダか。お前の美味いもんな」
「春樹さん、料理上手いもんね」
秋斗さんと泪さんの言葉に、拓也さんが「意外な特技ですね……」と感心して、春樹に「意外とはなんだ?」と凄まれていた。
ピザや飲み物をテーブルに置くとやはりというか。
「洵くん、お宝探ししてもいいですか?」
「オレもしたーい!」
拓也さんを筆頭に、秋斗さん、灰さん、和也さん、樹さんが僕の部屋に入ろうとし、「じゃあ、私たちは春樹さんの部屋ね」とウキウキしながら泪さんと実架さんが春樹の部屋に入ろうとする。
雅さんと琉架さん、皐さんは呆れていたが止めたりはしなかった。
「別に面白いものはありませんよ」
「そーそ。おもちゃとか使わねーし」
「春樹」
「てへ」
この間、大人のおもちゃを買いたいって言ってた春樹を止めておいてよかった。
僕の部屋に入っていく男性陣に着いていく。
春樹は泪さん達と自分の部屋に消えていった。
「寝室別なんだな?」
「あー、付き合う前の名残ですよ。今度ダブルベッド買おうって言ってて」
「やだ!ダブルベッドとか!!ヤル気満々じゃないっスか!!」
「……下品やぞ樹」
ニヤニヤしながら茶化す樹さんを皐さんが諌める。
ちなみに家宅捜索ヤル気満々なお兄さん達は部屋の中を物色、僕と呆れ組は入口でいる。
「ない!ない!!ない!!!」
「ないな。マジなんもないじゃん」
「つまらないですね」
物色組が本棚やベッドの下などを漁っては有り得ない!!無いなんて!!と驚く。
「何がですか?」
「エロ本とか」
「AVとか」
「は?!」
お兄さん達マジ勘弁してくれませんか。
「……持ってませんよ。興味ないですし」
「……え?キミ、インポなん?」
「琉架さん、何言ってんですか?」
あー、なんか嫌な予感するなー!!
「洵がインポなわけないじゃん。春樹とヤりまくってんのに」
「ちょっと!秋斗さん!!」
秋斗さんのこの言葉に、物色組のお兄さんはもちろん、呆れ組のお兄さんからも冷やかしの目で見られる。
いや、やることはやってるけど、本当にもうなんなの。
「その証拠に近藤さん(開封済)がもうこんなけしかないっス!!」
「うわぁぁぁああ!!」
僕はベッドの棚に入れてあった開封済の避妊具(残り少ない)を見つけられて慌てる。
「…………死にたい」
「あ、洵のネガティブスイッチ入ったじゃん」
羞恥心で死にそうになる。
「え、でもマジでなんも持ってないの?」
「……春樹しか興味無いので」
「「「春樹(さん)でしか勃起しないのか」」」
「もうそれでいいや」
僕はなにもかももう考えるのを放棄した。
そうかもしれないし。
いくらそういうセクシー系の女優さんを見てもなにも思わないと思う。
僕は春樹がいい。
「まあ、あんなえっちなお姉さんと同棲してたらそういうのいらないわな」
「灰さん、本当に怒りますよ」
いい加減にしてください
とため息混じりで呆れると灰さんは肩を竦めた。
家宅捜索をいくらしても何も出てこないからつまらなくなったのかお兄さん達は僕の部屋から出ていってくれる。
リビングにまだ春樹達がいなかったので適当にお兄さん達を座らせて、僕は春樹の部屋に向かう。
コンコンと閉められた扉を叩くと少し間を置いて春樹が出てくる。
「家宅捜索終わった?」
「うん。そっちはまだなんかしてる?」
「いんやー!洵クン、ウチらもリビング行くわな!」
「さあ、行こー!行こー!」
「??」
お姉さん達は妙にニヤニヤしていて、反対に春樹は顔を赤く染めて気まずそうにしているし、一体なんだろう?
なーんか、あったな、こりゃ。
まあ、いいけど。
リビングに行って、僕から時計回りに春樹、泪さん、拓也さん、和也さん、琉架さん、実架さん、皐さん、樹さん、灰さん、秋斗さん、雅さんで座卓を囲み、ワイワイやりながらピザや春樹が作ってくれたポテトサラダを食べて、お土産公開する事になる。
「実架、これ私から」
「こっちは私ね」
春樹と泪さんはそれぞれ実架さんに美ら海水族館の袋に入ったお土産を渡す。
春樹は全長35センチのふんわりしたジンベイザメのぬいぐるみ、泪さんは可愛らしい缶に入ったミニゴーフルを渡したみたいだった。
実架さんは感激して、「ありがとぉ!」とへにゃりと笑う。
僕も実架さんと琉架さんに美ら海水族館の塩サブレのお土産があったので渡す。
「2人で食べていただければ」
「悪いな、洵くん、おおきにやで」
「いえ、実架さんにはお世話になってますから」
「実架がお世話してもろてるの間違いやろ」
「琉架ー?」
実架さんと琉架さんがじゃれる。
双子のようで、双子だけの関係じゃない2人。
今は2人の関係はどうなっているんだろう。
秋斗さんと雅さんが灰さんに泡盛と奥さんにお菓子を渡す。
「やったぜ!酒!」
「奥さんはこっちな」
「いや、マジさんきゅ。嫁さんのもわりぃな」
そして、今食べるのとは別に樹さんと皐さんにちんすこうを渡す雅さん。
「わーい!また帰って食べよー!」
「……すみません、ありがとうございます」
旅行に行ったのも6人だったから今食べる分、旅行に行かなかったメンバーが後で家に帰ってからの分も買えた。
問題は拓也さんが和也さんに渡したお土産だった。
「……拓也、これはなんや」
「『ちんこすこう』ですよ」
ちょっと下品な形をしたちんすこうを買って来ていて、和也さんは怒る。
「雅さんみたいに普通の買えや!」
「お前はネタ要員ですから」
「ネタ要員はお前やこのどクソ変態野郎が!!」
胸ぐらを掴まれてガクガク揺さぶられているのに拓也さんはHAHAHAと笑っている。
樹さんは、今食べる分の紅芋タルトを頬張りながら、「この2人はいっつもなんっスよ。うるさいっスよね」と呆れる。
それからお土産を食べながら談笑していた時。
「……ちょっとええ?今、言う事でもないけど、今言いたい事あんねん」
「「「??」」」
急に、琉架さんが真剣な顔をしてそう僕達に告げる。
実架さんがその『何か』を察して彼を止めようとするが、彼はそれを制止する。
実架さんは渋々座り直す。琉架さんは伏し目がちにテーブルを睨む。
「洵くんは知ってるみたいやけど、実はなぁ«sins»のみんな、俺と実架な、双子やけど想い合っとんねん」
僕は驚かない。知っていたから、驚かない。
でも、«sins»のお兄さんお姉さん達もさほど驚いていないように見えた。
さすがに初めは「え、」と困惑みたいな反応したけど、嫌悪してる訳では無いらしい。
春樹が立ち上がり、実架さんと琉架さんの後ろに移動する。
そして、彼らを優しく抱きしめる。
やはり春樹は聖母だと思うんだ。
実架さんも琉架さんもびっくりして、特に琉架さんはとても慌てた。
「は、ははははは春樹さん?!なにしてん?!!」
「つらかったな。言ってくれて、ありがとうな」
「「……っ」」
春樹の優しい言葉に、2人は言葉を詰まらせる。
「つーかさ、お前らの恋を否定したらオレらもダメじゃん。なぁ、雅」
「そうだね。禁断度で言えば適わないけど俺達も『普通』じゃないからつらいのは分かるよ」
「秋斗さん……雅さん……」
元祖バカップルの2人も優しく2人を見つめる。
2人も、つらい思いをやり切れない思いをたくさんしたんだろうな。
「俺なんてそこのバカップルと高校時代から一緒にいんだぞ。もうどんな恋愛が来てもなんとも思わねぇわ。幸せならいんでない?」
「そうそう。まあ、私は拓也から聞いてたけどね。つらい恋してる奴らがいるって」
「拓也、何勝手に暴露してくれとんや」
「拓也を責めないで?私もつらい恋してたからだから。今は拓也が1番だけどね」
春樹は少し気まずそうにしながらも実架さんと琉架さんの肩を抱いている。
拓也さんは2人に「泪なら理解してくれると思ったんですよ」と告げた。
そして、春樹は続ける。
「私達はあんた達を見捨てない。私達の前では普通のカップルでいんだよ」
「……はるき、さ、」
「うん、つらかったな」
「……ぅあ……ぅぅっ」
「……っ……」
2人は泣き出す。
ああ、ほんとに«sins»は優しいし温かい。
僕はそんな«sins»が大好きだった。
「まあ、俺も泪ちゃん愛してたしな」
「はあ?兄貴のそれとは違うでしょ?」
何言ってんの馬鹿なの?
と辛辣を吐く泪さんを恐ろしく色気のある優しい笑みで見つめる。
「……そういう意味で、だよ」
「え……?」
灰さんの爆弾発言に一同が騒ぎ出す。
拓也さんが、「泪は渡しません!それが例えお義兄さんでも!!」と泪さんを抱きしめ、その腕の中で泪さんが硬直している。
和也さんと樹さんが「「修羅場!!」」と騒ぐ。
「待て待て『愛してた』だっつったろ!過去形だよ!!今は嫁さん一筋だよ!!」
「流れ弾で死んだ気分」
「どんな気分だよ」
はぁ……とため息を吐く泪さん。
なんだか大変な事になったな。
暴露大会でもするつもりなんだろうか。
……僕は全部知ってたけど。
「まあ、私も兄貴が好きよ。そういう意味じゃないけど」
「ヴッ」
突然の泪さんのデレに、灰さんはぐっ……と胸を押さえて倒れ込む。
「灰さんどうしたん」
「泪がデレた……死んでもいい……」
「え、死ねば?」
「なんなの?お前は究極なデレと究極な辛辣だな??」
荒木兄妹のやり取りに思わずみんなドッと笑う。
実架さんと琉架さんもスッキリしたように笑いあっていた。
「はー、楽しかったな」
「疲れたけどね」
どんちゃん騒ぎを終え、みんなが帰ってしまったので後片付けをする僕と春樹。
なんか色々あって、ドッと疲れた。
特に家宅捜索は精神的に堪えた。
僕は洗い物をする春樹を後ろから抱きしめる。
「なーに?」
「泪さん達と何話してたの?」
「お前がスケベタラシだって話してたの」
「えー……」
僕が項垂れると春樹はあはははっ!と笑う。
ちょうど洗い物を終える。
春樹は僕に向き合って見つめる。
「……そんなとこも好き」
「……うん」
「……まあスケベタラシになったっていったら実架にも『春樹さんが育てたんやろ?』って笑われた」
「……そだよ。僕を『男』にしたのは春樹」
「ん。ふふ」
僕達はまた今日も愛を囁き合う。
ーつづくー