平和に行きましょう。

6月、年の離れた友達とベースを見繕う(冬樹視点)


6月、年の離れた友達とベースを見繕う(冬樹視点)


ちょっと遅い梅雨入りした、6月中旬。
俺と洵菜はコンビニでバイトを始めた。
なんでも、父さんが昔働いていた所で、「あの玖木くんの子供か!!」と店長は驚いていた。
今の店長は父さんの先輩だったらしい。

そんなコンビニバイト初日の帰り。

「そう言えば、慶人さんとは連絡取ってるの?」

「あー、うん。次の慶人さんの休みに一緒にベース見に行く約束した」

慶人さんの次の休み。
つまり今日から3日後の土曜日だ。

「ベース?あの人も音楽やるの?」

「やりたかったんだって」

「ふーん?」

洵菜はなんか面白くなさそうな顔をする。

なんでだ?
たまによく分からん顔するんだよな。

「ちょっとスタジオ行って教えようかと」

「ふーん。いいんじゃない?」

「??」

なんだ、こいつ。
やっぱり様子おかしいな。

洵菜は、俺を男として好きらしい。
告白された訳では無いけど、自惚れでもなく、そうだと思う。
そして、俺が男を、雅さんを好きなことを知ってる。

俺が慶人さんをすきになると思ってんのかな。

……いっそ、なれたらいいのに。


それから父さんに一応許可を取って、3日経って、慶人さんと楽器屋に行く日になる。

昼食を食べてから、背中に可愛い相棒を背負って、駅で待つ。

ソワソワ。

いや、ソワソワってなんだ??

いや、楽しみではあるけど。

なんか周りが(特に女子が)ざわつき始めたなと思ったら、住宅街の方からやたら色気を纏った男……慶人さんがやってくる。

いや、雅さんも男じゃないような色気だけど、よく見るとこの人もなんかあれだな。めちゃくちゃそういう色気ある。

髭のせいで雅さんよりは男性的だけど、髭、似合ってないんだよな。

「……冬樹、悪い、待たせたか」

「いや、大丈夫大丈夫」

「行くか」

「うん」

俺達は楽器屋に向かって歩き出す。
と言っても、駅のすぐ近くにあるんだけど。

「そういやバイト始めたって?」

「そう。スタジオ代とか弦代とかやっぱり少しでも自分でって思ったから、洵菜とコンビニ」

「えらいじゃん」

ふと、慶人さんがふわりと笑う。

ドキリ……
それがあまりにも想い人に似ていて、瓜二つで、どうしようもなく愛おしくなる。

でも、やっぱりどこか、違くて。

なんでこんなにも鼓動が忙しないのか分からない。

でも、慶人さんの隣は、居心地がいい。

しばらく歩くと楽器屋に着く。
通い慣れたそこのベースコーナーに。

「……色々あるな……」

「値段もピンキリだよ」

「うーん……」

顎を触りながら、沢山あるベースを慶人さんは眺める。
俺はそんな慶人さんを眺めたり、ベースを見たり、店内をキョロキョロしたり、忙しない。

「……お前はどれ?」

「俺?俺はえーっと、これ。レジェンドのこのホディのやつ」

「……ふーん」

俺とお揃いのベースはお気に召さなかったのか、また別のベースに目をやる。
そして、「あ、」と小さく声をあげる。

「なんかいいのあった?」

「この黒いのいいかなって、思うんだけど。値段もお手頃だし」

慶人さんはセルダーってメーカーの黒1色のベースを指さす。

「かっこいいし、いいんじゃない?ケースはついてるみたいだね」

「あとなんかいるか?」

「スタンドとアンプかな?あとチューナーと、教本とか??あとバンドスコア」

「結構いるな。まあ、いいけど」

店員さんに言ってスタンドとアンプ、チューナーを見繕って貰う。
アンプはヘッドホンで聴くコンパクトなやつにした。

そして、教本とバンドスコアを1冊ずつ。

ベースをソフトケースに、他の購入品を袋に入れてもらう。

そして、俺たちはスタジオに向かう。

「冬樹くんはー、あ、Bね」

「はーい」

よく見知ったスタッフさんに部屋を教えてもらう。

それから、さっき買ったバンドスコアを広げて弦の押さえ方とか、色々教えていく。

って、言っても、俺もそんなまだ始めたばかりだから偉そうに教えられないけど。

「……よく来んの?」

「うん?2週間に1回くらいかな」

「ふーん」

バンドスコアを見ながらとりあえずイントロを練習していた慶人さんはポツリと呟く。

「……お前のバンドも見てみたい」

「え?!!」

「だめか??」

いや、可愛いな??!

上目遣いしないでくれます?!

「じゃあ、洵菜達に言ってみる」

「うん、楽しみにしてるわ」

なんでだろう。

凄く、慶人さんの笑顔が、愛おしいんだ。


ーつづくー

prev next
Back to main nobel