三話


 御館様との話が終わり、柱である時透無一郎くんを待っていた。
どんな人なのだろう、と緊張しながらも待つ。

「何をぐずぐずしてるの?」
「え!?」
私の待ち人は、隣にいた。無表情で私を見ている。

「君、弱そうだけど。本当に柱の資質があるの?」
「……」

呆気に取られて何も言えない。
何この子。幼いけれど、整っている顔立ち。薄い翡翠色の瞳。 確か、最年少の柱が任命されたって聞いたけど、この子か。

ま、いっか。 と彼は毛ほども関心を持つ様子はなく走り出す。その速さと冷静さに驚愕した。彼はきっと私より幾つも年下だ。

「なんだあいつ…、なまえ!黙ってねぇでなんか言ってやれよ」
「みつっぺ、本気? 大人げないなぁ」

 みつっぺは毎回私のために怒ってくれて、なんだか嬉しい気持ちになる。
私のことをお構い無しにどんどんと足を進めていく時透くんに着いて行った。


―――繁華街。
人が混み合い、笑い声やら話し声が飛び交っている。この街に鬼が出る。しかし、人達はそんな事知らないというような顔で騒いでいた。

「……聞き込みから始めます?」
「その必要は無いよ」

ツン、と鼻をかすめる匂い。
頭が痛くなった。時透君は方向を変え、その匂いの元へ駆けて行く。


「ああ〜、クッソクソクソ…!なんでおれの邪魔をするんだよ」
「うるせえ雑魚が、いいから消えろ。この街の人間は俺の獲物なんだよ」

入り組んだ路地裏。そこには、鬼が三体、争った形跡があった。鬼の縄張り争いのように見える。
私たちに気付いていない限り、そこまで強くないのだろう。

「…真ん中の一体は少し手強いかもだけど、君なら余裕だよね」
「え?」
 小声で言い、時透君は顎に手を当て考えている。
「御館様は、力量を試してくれって言ってたし、いいよね。うん。そもそも僕だったらこんな鬼相手にならないし……」

ブツブツと呟きながら、彼は私の背中を思い切り押した。

「じゃあ、あとは宜しくね」




ヨル