四話 君って馬鹿なの?


「え、ええええっ!?!」

 息を潜めていたのに、あまりにも強く押されたから前へ飛び出てしまった。急いで体制を整える。

「あ?お前いつから居たんだ……その格好、鬼殺隊か?」
「どいつもこいつも邪魔しやがって!!食ってやる!」
「食うのはおれだ!」

時透君が酷いとか、押された背中が痛いとか、そういう事を考えている暇はなかった。
「えっと……!」
"炎の呼吸 肆ノ型 盛炎のうねり"

「うがぁぁあっ!」
 二体同時に仕留めたところで、後ろから「頑張ってー」という明らかに棒読みの声が聞こえてきた。

――もう一体の鬼の姿が無い。そう気付いて、振り返った時。私の体は勝手に動いていた。



時透side

へぇ。
彼女の炎の呼吸を見て、柱には程遠い実力だし、どうして柱の素質がある、なんて支持されているのかわからなかった。

彼女が鬼を倒している間に、もう一体は僕を仕留めに後ろに回っていた。…僕が一般人だったら、殺されてる。
…これじゃ、皆を守る柱にはなれないよ。
さて、倒すか、と思ったその時だった。
「時透君!!!」

ぐい、と腕を引かれ、コンクリートの上を彼女に包まれながら転がった。


「は……?」
「大丈夫?怪我ない…?ごめんね!?油断してた……!」
「……」

 鬼は全て消えていた。彼女が僕を庇うと同時に頸を切ったのだろう。僕は柱だし庇う必要だってない。なのに―――

「君って馬鹿なの?」




ヨル