眩暈


眩暈

その日、名前は見てはいけないものを見てしまった
リヴァイと付き合い始めて半年、手を出すどころか触れるだけのキスしかしていない

休みの日にリヴァイがどこかへ出かけるのを見送り、自分も街に買い物に出た
…までは良かった
買い物の袋はリヴァイ班のお土産がメインだったが、勇気を出してリヴァイに抱いてもらおうとセクシーな下着も買ってみた

これでリヴァイ兵長、襲ってくれるといいんだけど、と誰に言うでもなく名前は呟いた

陽も落ちてきた頃、リヴァイとハンジが高級そうな宿に入って行くのを見てしまったのだ
頭を殴られたようなショックを受け、泣きべそをかきながら兵舎に戻った

「あれ、名前どうしたの?」

声をかけてきたのは同僚のペトラだった
ペトラに慰めてもらおうかと一瞬考えたが、口に出してしまったら認めたみたいで悲しかった

結局名前は何でもないよ、とペトラにお土産を渡しただけで部屋に戻って布団を被って泣いた

私は兵長の彼女じゃなかったんだ
私は2番手で、本命はハンジ分隊長だったんだ
だから私に何もしなかったんだ

考えれば考えるほどネガティブになってしまい、名前は泣き疲れて眠ってしまった

コンコン、とドアがノックされ、名前は意識を取り戻す
誰だろう、と思いながらはーい、と返事した

「俺だ。入っていいか?」

声の主は今はいちばん聞きたくないリヴァイの声だ
今会ったら何を言うか分からないので、帰ってもらおうと名前は心に決める

「すみません、兵長。今日は調子が悪いので、明日にしてもらえませんか?」
「調子が悪いなら余計心配だろ。とりあえず入るぞ」

あ、鍵かけるの忘れた、と、名前は思い出した
ドアノブを力いっぱい掴んで開けさせないようにしたが、リヴァイの力には適わない
無慈悲にもドアは開き、涙でぐちゃぐちゃの顔を見られてしまった

「オイ、どうした、そのツラ。誰に泣かされたか5秒で答えろ。オルオか?」
「言いたくありません。とにかく帰ってください」

ぐいぐいとリヴァイの胸を押して追い出そうとしても力はリヴァイが上で、びくともしない

「もしかして、泣いてる理由は俺か?」
「……そうです。だから帰ってください」
「そんな訳に行かねぇだろ。何があった?」
「言いたくないです」

この押し問答だけでも辛いのに、リヴァイは帰ってくれない
仕方なく名前は話が終わったら帰ってくれるのを条件に部屋に入れた

「で、何か気に入らねぇことでもあんのか?」
「私…兵長とハンジ分隊長が宿に入っていくの見たんです。兵長もハンジ分隊長みたいに大人の女性が良いんですよね。私みたいな子供じゃなくて」

リヴァイはふーっと息を吐きながら口を開いた

「クソメガネとは何もしてねぇ。信じるか信じないかはお前次第だが。お前を上手く抱く相談をしていただけだ」
「なっ、抱く…!?兵長、子供の私には興味無いんじゃないですか?」
「好きな女を抱きたいと思うのは当然だろ。それより名前」

は、はいっと上ずった声で返事をしてみたが名前だったが、頭はパンク寸前だった
抱きたい?私を?ハンジ分隊長とは何も無い?本当かな?それよりリヴァイ兵長、今日もカッコいい
等と、関係の無いことまで浮かんでくる

そして、立ち上がったリヴァイは座っている名前の足元に跪き、右手の薬指に指輪をはめた

「兵長…何ですかこれ?」
「見ての通り指輪だ。んなことも言われなきゃ分かんねぇのか」

またしてもふーっと息を吐き、リヴァイは跪きながら名前の目を見た

「1回しか言わねぇから、よく聞けよ。名前、愛してる。お前以外の女なんか要らねぇ。だから抱かせろ」
「えっ、あっ、はい。お手柔らかにお願いします」

挙動不審になりながらも何とか名前は返事した
そうだ、と思い出し名前はリヴァイにしばらくドア側を見てて貰うことにした

そして、私服を脱ぐと、今日買ったセクシー下着を身につけた
白い総レースのブラ、お揃いのショーツにガーターベルト
白いストッキングをベルトで留めた

「リヴァイ兵長、こっち向いて大丈夫です」

顔を真っ赤にしながらもじもじする名前を可愛いと思ったが、何よりその今まで見たことない下着を着けた名前に見とれてしまった

「お前、煽ってんのか?手加減しねぇからな」
「お、お手柔らかにって言いました」

次の日の朝
名前が起きたらとっくにリヴァイが居なくなってた所か、訓練がとうに始まる時間だった

慌てて隊服を着ようとするが、昨日の破瓜の違和感で上手く動けない
コンコン、と部屋がノックされ、答える間もなくドアが開かれた

「おはよう、名前。食事を持ってきたよ」
「ハンジ分隊長!おはようございます。私、訓練寝過ごしてしまって…」
「だーいじょうぶ!リヴァイが今日は名前は休みだって言ってたから」

ニコニコとハンジはカーテンを開けて陽の光を部屋に入れた

「ご飯食べられる?」
「はい、大丈夫です」

食べたらリヴァイが顔出すってよ、と言い残してハンジは去っていった

名前は指にはまっている指輪を見つめながら昼食を摂った
幸せだなぁ、と部屋でぼーっとしてるとノックと同時に部屋の扉が開いた

「オイ、生きてるか?」
「リヴァイ兵長。おはようございます。生きてます」
「辛いところとかはねぇか?」
「多分、大丈夫です」
「なら今夜も抱くぞ」

昨日初めてだったのに今日も?と名前は軽い眩暈を覚えながらも、行為自体嫌じゃない自分が居た
そして昨日と同じ台詞を口にする

「お手柔らかにお願いします」
「あぁ、優しく抱いてやる。だから今日は寝てろ」

はいっと答えるとリヴァイは訓練に戻り、名前はベッドに横になった
早く夜にならないかな、と思いながら


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