パン屋さんのお嬢さん1



パン屋さんのお嬢さん1

ハンジさーん、と遠くから声がする
馴染みのパン屋の売り子だ
今朝もパンを届けに来てくれたんだろう

「おはよう、名前いつもありがとう」
「おはようございます!こちらこそいつもありがとうございます」

パン屋の少女はあどけない笑顔でニコニコ笑う
そして荷物のパンをハンジに渡す

「こっちがいつものご注文のパンで、こっちがリヴァイ兵長ご注文の特製パンです」

「ありがとう!リヴァイは特注じゃなきゃ食べないからねー。全部美味しいんだから他のも食べりゃいいのに」

「あはは。調査兵団にご贔屓にしてもらってるだけでも十分ありがたいです」

等といつもの会話を交わしながらハンジは立ち話を長引かせようとする
ハンジはこのパン屋の少女が好きだった
姉妹のようなものか、恋かは分からなかったが、少女と話すと不思議ともっと笑って欲しくなった

「あ、そうだ。今度から兵舎が変わるんだ。エレンって言う知性を持った巨人の子が入ってきてね。その子の為に移動するんだけど、届けに来てもらえるかな?」

「はい!どんな所でもお届けに上がります!」

ハンジはニコリと笑うとありがとう、と言い、名残惜しいが名前を帰す

「それじゃ、確かに受け取ったよ。また明日ね。移動する兵舎の場所は追って伝えるよ」

「承知しました。訓練で怪我とかしないで下さいね。また明日!」

パンを持ったハンジは食堂にパンを置き、リヴァイの部屋にノックもせず入る

「リヴァイ!聞いてよ。名前が今日も可愛かったんだよ!しかも、兵舎移動しても来てくれるって。どうしよう、馬とかで送った方がいいかな?そうしたらもっと喋れるよね。よし、あんまり遠くなったらそうしよう」

と、会話と言うには余りに一方的な話をするが、当のリヴァイはウンザリしている

「うるせぇよ、クソメガネ。そんなに好きならブツ生やして食っちまえ」

「嫌だなぁ、リヴァイ。朝から下ネタ?欲求不満?あーもう!名前が可愛くて鼻血出そうだよ」

「そのまま枯れ果ててくれるとありがてぇんだが」

「さて、朝食の時間だ。今日のパンも美味しいよ。遅れずにきてよ」

リヴァイの嫌味をものともせず、ハンジはスキップで食堂に向かう
名前が届けてくれるだけでもパンは美味しいのだ

「よーし、エレンの調査も増えることだし、頑張るぞー」

誰に言うわけでもなくハンジは呟いて意気込む
今日が終わればまた明日会える
ハンジはそれだけを楽しみにしていた
そして、少女と接するハンジはリヴァイ班の誰よりも幸せそうだった

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