桃色のレディは弓を引く


木吉さんは、いい男だ。

背が高くて、顔も良くて、元スポーツマンらしい精悍な体つきをしていて。おまけに頭だって良い。
なのにそれを全然鼻にかけてない。いつも太陽みたいに笑ってて、元気をくれる。ちょっと抜けてるし、掴み所がないような感じがあるけど、そこもまたイイ。なーんて。

これが、うちの会社にいる女子社員の大方の意見だ。
私が木吉さんと知り合いだということで、たくさんの人から相談されてきたけど、はっきり言ってそれはみんな叶うことのない願いだと私は思う。


今までも、これからも、木吉さんが本気で惚れるのは私のだーいすきなあの先輩だけだからだ。

意地っ張りで、気が強くて、天邪鬼。木吉さんのアピールを無意識に黙殺して、それでもなお寄りかかっていく。ずるい人。でも、それを上回るくらい、名前さんはどうしようもなく可愛い性格をした人だ。

やっと捕まえた名前さんを、木吉さんはこれからも決して離すことは無いのだろう。

それは二人の道のりをずっと見つめ続けた私にとっても、一番の願いだ。


二人の出会いと、これからの未来への希望と、それからしつこいくらいの粘り強さで見事彼女を捕まえた男のために。
ささやかな贈りものをしてあげようと思う。


「名前さん、大変です!」