ショートホームルーム


人間というのは、学びを積み重ねて生きる動物だ。

獣に育てられた少女が直立二足歩行をすることがなかったというのも、そういうことだ。少女の周囲には、二足歩行をすることのできる存在がいなかった。


幼くして両親を失ってしまった少女もいる。彼女は叔父夫婦に育てられ、"心から"甘えることを知らずに育った。
やがて少女は結婚し、元気な男の子を産んだ。
少女は、子供を愛することを知っていた。だから子供を愛しいと思うことができた。

しかし、である。
子供が母に甘え、抱きついてきたとき。彼女は子供に対してどのような反応をとればよいのか全くわからなかった。
『抱きしめ返す』という、ただそれだけのことが出来なかったのだ。少女が、親に甘えることを知らなかったが故に。
それに、近しいようなものだと思う。



名前さんは、恋を知らない。