高校生



彼女と夏祭りに来た。
茶色の髪を後ろでまとめて、紺地に薄紫の朝顔が咲く浴衣姿の彼女は普段の騒がしい彼女とは違って、綺麗だと思った。調子にのるから口に出しては言わないけど。
散々歩き回って、チョコバナナやらわたあめやらたこ焼きやらなんやら、よくもまあそんなに食えるなと思う量を食べきった彼女は、いまも灯籠流しを見物しながら大きなりんご飴を舐めている。

「ぷかぷか浮いてるねー。よく落ちないな」
「流れが急なところは倒れてたりもするぞ。ほら、アレとか。そこにも」
「やっぱり倒れちゃう子も居るのか〜、こんだけあるもんね。………にしても。本当に、綺麗」

川を流れる灯篭の光で、宵闇のなか、あたりはほのかな橙色に染まっていた。
彼女の髪が照らされて薄っすらと透けている。瞳には灯篭の灯りが映り込んでいて、零れそうなほど光が溢れていた。

「ねぇ、堅治。綺麗だね」

笑いかけられたら、喉がひどく渇いて、鼻の奥がツンとして、瞼の裏が熱くなった。
彼女のことを、愛しいと思う。この気持ちに嘘偽りはないと胸を張って言える。
それなのに、なんでだ。愛しいと感じるたびに、あいつの笑顔が脳裏に浮かぶ。

「……たしかに、綺麗だ」
「来年も二人で見るよ」
「なにそれ、決定なのかよ」
「あったりまえじゃん。堅治がいままで付き合ってきた女の子たちみたいにさっさと別れられると思ったら大間違いだよ!」
「そりゃ楽しみだ」

ふと見れば口の端にりんご飴の赤色がついていたから指で拭ってそのままその指を舐めてみる。

「ん、あっま」
「…なんかさっきの、前言撤回したくなってきた」
「はぁ?なんで」
「堅治といると、私の心臓がもたないよ」