祈願のきれぎれ


この称号を得てから、人生とはいつ止まるか分からない不確定なルーレットのようなものだと思うようになった。終わりがいつなのかも分からない。その終わりが本当の終わりなのかも分からない。そんなことを考えると、恥ずかしい話、恐怖すら感じることがある。
毎日のように見る悪夢。果たして私は正しく人生を終えることができるのだろうか。延々と回り続ける壊れたルーレットのように、死んでも止まらないレールの上を歩かなければいけなくなるのだろうか。終えることができたとしてもそれは穏やかな終わりなのだろうか。それとも彼のように少なからず悔やむ気持ちを残したまま逝くのか。考えれば考えるほど抜け出せなくなる思考の渦。何故私ばかりこうも悩まなければいけないのか。私だけ。私ばかり。私はなにもしていないというのに。彼らのようには成れないというのに!

「フロンティアブレーン、もうすぐ挑戦者がやってきます。準備を。」

職員の一言で我にかえる。ああと適当に相槌を打ち、準備を始めた。挑戦者、という単語さえすぐに認識できなかったのだから、大分深く考えこんでしまったんだなと実感する。
我ながらどうかしている。自嘲気味に溜息を吐きながら私が立つべき舞台へと歩みを進めた。

「ようこそ、運がシナリオを形作るルーレット会場へ。」

壇上へと続く道を進んで行くと徐々に観客席側から歓声が沸き上がっていく。観覧者との距離が近いのがこの施設のいいところだ。薄暗い室内に光り輝く大きなモニター。その画面に映し出されるものは挑戦者にとって
の味方となるか悪魔となるか。一方的に不利になるようなルールを押し付けるなと文句をいう人もいるけれど、そのルールは当然ブレーンである私にも適用される。そのルール付与がこの施設に挑戦する醍醐味というものだと思うのだけれど。

「私はルーレットデウスのライ。……きみとのバトルを楽しむ者さ。」

挑戦者の前に立ち、名乗りを上げる。さて、無機質に回るルーレットはどのような条件を私たちに与えてくれるのだろうか。
今は、今だけは彼らのことも人生の果てさえも忘れてこのバトルに熱中させておくれと願いを込め、私はボールを握りしめた。
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