男女間の通話と言って想像できるその男女の関係性と言えば、親子とか、きょうだいとか。もしかしてコイビトなんてこともあるかもしれない。
けれど俺たちの関係性はそうじゃない。ただの幼馴染。ベリーと俺の関係なんてそれだけで十分だ。記憶があるときから付き合いのある、やけに家族間での関わり合いのある幼馴染の男女。
だから、
「ベリーさ、最近なんかあった?」
だから、顔なんか見なくても話声の調子で最近なんかあったかなーくらいの察しはついてしまうのだ。不思議なことに。
『うん!最近アルゴくんにバトルの指導してもらってるの!ちょっとキツイところもあるけれど、でもとってもいいかんじにいっている気がする!』
「あ、アルゴだぁ〜?!」
予想外の答えに思わず大きな声を出してしまった。アルゴって、あのアルゴか。あの日にいけ好かねえ態度を取ったあいつが、今、ベリーにバトルを教えていると。そう聞こえたんだが?聞き間違えではないかと思いもう一度聞いてみるが、俺たち二人があの日あの時あの場所であったアルゴで間違いないらしい。
…嘘だろ。俺はあの時の姿しか知らない。あの時の、高圧的な態度と突き刺すような冷たいあの目しか知らない。だからベリーが評しているような人物は知らない。分からない。
「詐欺だよ!騙されてるって!」
『さ、詐欺じゃないよ!キツイって言ったけど優しいところもあるもん!ちゃんと教えてくれるもん!』
「アメとムチってやつじゃねそれ!詐欺だろ!」
『詐欺じゃないもん!』
「詐欺!」
『詐欺じゃない!』
「さーぎ!!」
『ちがうもん!!』
同じ言葉の言い合いも回数を重ねれば結構体力を消耗するものになる。何回かそんな幼稚な言い合いを経た俺はぜえぜえと肩で息をしていた。スマホの向こうからも似たような息づかいが聞こえたのでベリーも俺と同じ状況になっているんだろう。本当、変なところで強情なんだから!素直に詐欺って認めればいいのに。
「分かった!俺もそのジム戦見に行く!」
『は?!何急に!やめてよ恥ずかしい!ネープルはネープルのやることやってよ、捕獲とか練習しなきゃじゃん!クリスさんとのやつ毎日あるんじゃないの?!』
「じゃねえと納得できねーもん!お母さんとの練習は休み入れる!いつ?いつ挑戦すんの?!」
『まだ決まってない!来ないで!』
「行くったら行く!シルバーさんにお願いして聞きまーす!」
『あっ駄目だ私お父さんに嘘は吐けない終わった』
何か終わりを感じていたベリーを置いて通話終了という文字に指を這わせる。
ツー…という無機質な音を聞きながら俺はあることに気づいてしまった。
あんなに強引に、勢いで見に行く!なんて言ったけれども、ベリーのジム戦を観戦するということは、よくよく考えればあのアルゴと会う予定を取り付けるということにもなるのではないのか?と。
あの時は精一杯気ィ張って、足踏ん張って冷静になったら怖気づきそうな心を何とか怒りで塗り替えてああして反抗的な態度を取れていたけれども、再び会うとなるとどんな顔をしてどういう態度をとっていいものか分からない。しかもジム戦中はベリーが挑戦しているとなると観戦エリアに二人っきりということになるだろう。いや気まずっ。無理無理無理、絶対会話なんてできねえ!
あーどうしよ。ベリーのジム戦気になるけど、騙されてないかも気になるけど!でもあいつと会うのは、うん。…うん。
がしがしと頭を掻いてどうしようかなーと思わず零してしまうくらいには困ってしまった。勢いってやっぱすげえや。さっきまで行く!むしろ絶対行ってやる!くらいの気持ちだったのに。本当、どうしよう。
まあああ言った手前もうどうにもならないんだけどさ。腹括るしかないかあ。