会いに来てと言ったら会いに来てくれますか
助けに来てくれますか
何があっても友達でいてくれますか


「__っつーわけよ。被害はゼロとは言わねェ。でも死人はいねえから、最善の選択を各々した…んだと思う。」
『おー、凄いじゃあないですか。偉い偉い。褒めてあげましょう。怪我人は?』
「ホウエンの図鑑所有者が軽傷。俺たちジョウト図鑑所有者はかすり傷くらいだな。アゲイトは右目の辺りを負傷した。怪我はそれくらいだ。」
『は?ゲの字に何させてやがるんですか?というか何でゲの字がそこにいるんですか?図鑑所有者だけで完結させなさいよ。元テスターまで引っ張ってきてどういう了見なんですか?』
「キレんなよ。」

ジョウト・ホウエン両地方の『次世代図鑑所有者』6名と『次世代ポケモン図鑑”元”テスター』2名を巻き込んでの、伝説と称されるポケモンを宥め、撤退させる戦いは幕を閉じた。
無傷とは言わない。被害も無いわけでもない。だが最悪の結末だけは回避した。電話先のリュケイオスに話した通り、アレら全てがあの時の俺たちができる最善だった。完治できる怪我程度で抑えられたのは、本当に運が良かったとしか言いようがない。
決着がついて数時間が経った今、冷静になったからこそ己の力量不足に腹が立った。
もっと良い立ち回りができたかもしれない。もう少しタイミングが早ければあいつらはあんな怪我を負うことにならなかったかもしれない。先代図鑑所有者たちのようにできれば__。沸いて止まない空理空論が俺の頭の中を埋め尽くした。


『あのー、そちらから電話かけておいて黙り始めるの止めてくれませんか?ジブン、これでも時間がないんですよ。』
「ああ、すまん。…つか時間ないって何だよ。お前また何か発表すんの?そういう大事なの期限ギリギリになるまで放置すんなよな。」
『あはははー、残念な…らそういうのでは__…ですよねー。』

リュケイオスはぴしゃりとした言葉で俺の思考を両断した。こいつの変なところでドライな一面は嫌いではない。
が、奴の放った時間がないという単語にどこか違和感を覚えたので、素直に疑問として聞き返すことにした。時間がないなら、また後で詳しく聞かせてくださいねーとバッサリ切って終わらせればいいのに。むしろ時間がないお前ならそうするだろうに、なんて思いながら。

『ねえアルゴ。……もジ__が、__と言ったら、……___?』
「ん?何。」
『____が__…も、___き__すか?』
「…は?何、マジで聞こえねえ。電波悪ィ。もう一回言って___」


プツン


ノイズが頻繁に混ざり始め、最早ノイズどころではなく音すら途切れ途切れに聞こえ始めた。どこで通話してやがんだと思いながらそう聞き返した瞬間、スマホは通信が無情にも切断された証の音を俺の耳元へと届けた。
おいふざけんな。何が言いたかったんだよテメエはよ。そんなことを思いながらリュケイオスにまた電話をかける。

『この電話は、電源が入っていないか、電波が届かないところにありますロト。発信音の後__』

が、何度掛けても返ってくるのは事務的な言葉だけだった。
淡々としたロトムの声に嫌気が差し、溜息が漏れる。いくらシンオウが田舎っつっても、あいつがよく遺跡に足を運ぶと言っても、これだけ掛けてもワンチャンすらないとか、電波が悪いにも程があるだろうが。

「アルゴー!ツクシ博士とウツギ博士が話聞きてえって!こっち来て!ホウエンのナンチャラ博士も一緒だって!」
「今行く、待ってろ。あとホウエンの博士はオダマキな。」

ネープルに返事をし、何回掛けても繋がらない通話を切るように画面をスワイプをし、スマホを入れたかばんをバクフーンに預けて、俺はわざわざ現地に足を運んでくれた博士たちのもとへ向かうために足を進めた。博士たちが求めているのは十中八九事件の詳細。ネープルとベリー、そしてホウエンの図鑑所有者だけじゃあとっ散らかった報告になるだろう。俺が何とかまとめあげねえとな、さて何から話そうか、なんて思いながら。


『この電話は、電源が入っていないか、電波が届かないところにありますロト。
この電話はお客様のご希望によりお受けできませんロト。
おかけになった電話番号への通話はお客さまのご希望によりお繋ぎできませんロト。
おかけになった電話番号への通話はお客さまのご希望によりお繋ぎできませんロト。
この電話はお繋ぎできませんロト。
この電話はお繋ぎできませんロト。
この電話番号は現在使われておりませんロト。
…アルゴ、もう掛けても無駄ロト。通信料を無駄に取られるだけロトよ〜って、切り忘れロトか。じゃあボクが勝手に切るロトよー!』


プツン


通話は完全に切れているものだと思っていた。
だから気が付かなかった。ロトムがそんなことを知らせてくれていたということも、俺たちジョウト・ホウエン両地方が戦っている最中、シンオウ地方も___いや、シンオウ地方”も”と言うのは違うのかもしれない。
___シンオウ地方は俺たちが経験したものとはまた別ベクトルの事件が起きていたということに、あの時そこにいた誰もが気が付かなかった。
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