流星みたいな傷
目の前が真っ暗になった。
それは、随分久々にテレビ放映されたチャンピオン防衛戦を見ていた時で__オレの兄ちゃんが、挑戦者であるドラゴン使いと対峙している姿だった。挑戦者は兄ちゃんにも引けを取らないトップレベルの実力を持っているトレーナーだということは、手持ちのポケモンの指示の出し方だとか、ポケモンの動きだとかで見て取れるものだった。
これは、もしかすると、久々に兄ちゃんの本気のバトルが見れるのではないか?そう心が浮き立っていた時だった。
「戻れフシ。」
テレビから聞こえてきたのは兄ちゃんのもので、そこに映っていたのはオーキド研究所で貰った相棒であるフシギバナのフシをボールの中に収め、次のポケモンを出さないまま立ち尽くしている姿だった。
何やってんだよ兄ちゃん。考えるにしても長すぎるよ。
それは挑戦者も感じていたようで、「どうしたシノノメ」と兄ちゃんを呼ぶ声が耳に入ってきた。
兄ちゃんはというと、フッと柔く笑みを零し、「疲れたなジーク」と言い、口角を上げて衝撃的な言葉を発した。
「__やめた。降参だ、降参。」
その日、数年ぶりにセキエイリーグのチャンピオンが交代することになった。
新チャンピオンの誕生に何も知らない人々やメディアは熱狂し、あの日の映像を見ていた人々は困惑をしていた。
勿論オレも困惑をしていた方の人間であって。
「ただいま。負けたよ。」
そう言って家に帰ってきた元チャンピオンに対して、オレの心は失望という感情しか出てこなかった。