骨を燃やして花にはなれない

「グリフ様は素晴らしいわ!トキワの力も持っていらっしゃるし、ポケモンバトルもとてもお強くて!」
「やっぱりワタル様のお子様という噂は本当なのよ。そうとしか思えないわ。…でも、それと比べるとジーク様は…。」
「ジーク様もお強いのだけれども、グリフ様がいるとどうしても霞んで見えてしまうわよねえ…。」

幼い頃から俺はずっと二番手だった。
何をしてもグリフの次。何を言ってもグリフより劣る。それがジークという男の評価だった。

「そんなことを言わないでくれ。」
「ぐ、グリフ様?!聞いてらしたですか?!」
「ああ。僕のことを褒めるのはいいが、それと引き合いにジークを貶すことだけはやめてくれ。ジークだってとても強いんだ。僕の弟を軽んじないでくれるかな。」

通りすがりだったのだろう。自分が称賛されているというのに、それよりももう片方の相手が貶されているのを咎めるとは。さすがだ俺の兄者様は。聖人君子の生き字引。誰も叶うことのないフスベとトキワのハイブリッド。常に俺の数歩先を生き、背後に影を造る達人。
ああ、吐き気がする。


「ジーク、何故そんなにグリフを敵視するの。貴方の兄でしょう?」
「血も繋がってない奴を兄弟とは言わない。第一俺はあいつを兄者だとは思ってない。」
「ジーク!言っていいことと悪いことが」
「母さんこそ何でそこまでグリフにこだわるんだよ!おかしいだろ、自分の息子が弱いだの何だの比較されて、自尊心なんてバキバキに潰されて、それでもなおあんなやつの側にいろっていうのかよ!兄って敬えっていうのかよ!おかしいだろこんなの、狂ってるよこの里は!」

そうだ、狂っている。この実力主義の里はおかしい。俺はおかしくない。俺は狂ってない。
正しさと答えを求めるために俺は走り出した。こんな狭い世界で、前時代的考えの蔓延る環境で生きていけるか。そう思っていた。


これは、『走った先にすら何もなかった』ということにようやく気付いた男の話だ。

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