瞼の裏でだけ慈雨が降る
この里はおかしい。ずっと昔からそう思っていた。
「グリフ様は素晴らしいわ!トキワの力も持っていらっしゃるし、ポケモンバトルもとてもお強くて!」
「やっぱりワタル様のお子様という噂は本当なのよ。そうとしか思えないわ。…でも、それと比べるとジーク様は…。」
「ジーク様もお強いのだけれども、グリフ様がいるとどうしても霞んで見えてしまうわよねえ…。」
混ざりもので部外者の僕を持ち上げて、純血であるはずの弟分を見下げる。僕に数歩及ばないというだけで侮られるかわいい弟分がいるという事実が、どうしても僕には耐えられなかった。
「そんなこと言わないでくれ。」
本当に。冗談ではなく。あの子がどれだけ神経をすり減らしているのか。精神を摩耗させているのか。噂をしているだけのきみたちには分からないだろう。そして僕がどんな幼少期を過ごしてきたのかも。何も知らないくせに勝手に語るんじゃない。
どうかこんな噂をする人が一人でもいなくなりますように。ジークがここで過ごしやすくなりますよう。そう僕は毎日願っていた。だって曲がりなりにも僕の弟分。かわいくないわけがない。フスベのジムリーダーに相応しいのは僕だと皆は口を揃えて言うけれど、僕自身としてはジークを推薦したい。僕としてはフスベから離れてどこか遠くで平凡に過ごしたいと、ジムリーダーにはジークをとそう言ってみようか。長老が駄目と言っても次期長なら聞き入れてくれるはずだ。
___そんなことを考えていた次の日。弟分であるジークが無断でフスベから出たと聞いたのは、僕が長老と面会をする数刻前のことだった。