火溜まりをゆくためのことば

「リナちゃーん!おはよ!今日放課後空いてる?」
「……空いては、いる。」
「じゃあ授業終わったらきみの教室の前で待ってるよ。テスト勉強手伝ってほしいんだけどさ、いいかな。」
「………いいよ。」
「ありがと。じゃあ放課後またね。」

「…ねえ、リナって隣のクラスのショウキくんと付き合ってるんだっけ?」
「記憶の中では告白も何もされていないんだけど。」

友人は夏休み明けからこうしてほとんど毎日誘われる私と、誘ってくる彼のやり取りを見てそう言うのだ。違うのに。
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「あのねえ、そういうわけでちょっと色々言われてるんだけど。」
「へーそうなんだ。」

隣のクラスのちょっとした有名人、ショウキという男は何でもないような涼しい顔をして、平坦な声色でそう返してきた。今日も今日とて誘われたのだ。というか週に2・3回はこうして誘われているのだ。よくよく考えれば週5回しかない学校の放課後を半分以上この男と一緒に過ごしていると思うと、なんだかおかしいと思ってきた。
私たちだって親の保護下にある子供と言えど、14歳の立派な思春期の男女だ。そういう関係か、と問われれば当然相手のことを意識してしまう。私の感覚が普通であって、さして動揺も何もしていないこの意味不明な男の反応が異常だと思うのだ。多分。
でもそんな風に噂されてもこうして律儀に付き合ってくれるんだね、なんてまるでからかうような表情をしてそう言うものだから一応一部否定させてもらった。せっかくの誘いを理由なく嘘を吐いて断るのは私の主義に反するのだ、と。その反論すらもへーと適当に流されてしまったけれども。

「他人事だと思ってる?自分のことだよ?」
「いや別に、俺としては別に噂されても支障ないと思ってるから。」

なんだか頭が痛くなってきた。
私の感覚が可笑しいのか、それともこの男の感覚が一般とズレているのか。『着眼点も行動力も他のクラスメイトとは大違い、とにかくスゴイ奴』なんて言われているけれども、ただただ常識的な感覚が欠落しているだけなんじゃないかと思う。
だからスクールに通いながら休日にジム巡りを進めるなんて、普通の学生では到底考えっこないことを実行するのだ。スクール史上初らしい。現役学生でジム巡りを始め、順調にリーグ挑戦への道を歩んでいる人間は。

「あのさあ、聞いておきたいんだけど、何で私をこうして頻繁に色々なことに誘ってくるわけ?きみ忙しいでしょ。普通に学生生活とか課題とかテストとかもあるし、休日はジム巡りしてるんでしょ?そのために手持ちのポケモンたちも鍛えなきゃいけないわけじゃん。私に構ってるヒマないんじゃない?」
「ん、理由がほしい?じゃあさ、一目惚れって言ったらどうする?きみのことが好きだから、どんなに時間がなくても無理矢理にでも理由付けをしてきみと関わろうとしている…とかね。」
「じょ、冗談も大概にして!」

本当に、この男は!初対面のあの頃から一体なんなのだ!

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