スプリング・イン・アナキズム
「オレいっちばーん!父さんとおんなじ、フシギダネ!」
「普通選ぶ権利は年下にあるんじゃないのか?こんなやつが三つも年上とか、世も末だな。」
「…ヒトカゲ。まあ三匹の中じゃましか。」
「なんだとテメエ!フシギダネ馬鹿にすんな!表出ろやオレが負かしてやっからよォ!」
「『火は草に強いです』って学ばなかったのかよ。上等だ出てやんよ!」
「うるさい年上…。」
当時チャンピオンだった男の息子、シノノメ。
ジョウト地方のドラゴンつかいの里出身の実力者、ジーク。
そしてのちに様々な才能を開花させることになるオーキド研究所の跡取り息子、プラシオ。
カントー地方マサラタウン、オーキド研究所。新型ポケモン図鑑を与えられた三人の子供の第一印象は、決して良いものではなかった。そりゃそうだ。一人一人が個性の塊だった。自己主張激しい二人とそれを冷めたような目で見つめる一人。そして何が何だか分からないが、おやが決まった!やったあ!嬉しい!初めてのバトルだ!と無邪気に喜ぶポケモンたち。そして早く旅立ってくれと言わんばかりの顔をして目を閉じているグリーンさん。そして腕試しのバトルが終わった後に交わしたリーグで会おうと言う約束。それが俺たちの旅立ちの一ページ目だった。
「シノノメは何で図鑑所有者に立候補したんだ?」
ニビジムのトーナメント戦の待ち時間で、再会したジークは俺にそう問うてきた。
「…理由なんて考えたこともなかった。父さんが図鑑所有者で、オレも図鑑持って旅してえーってずっと思ってて。そんで、グリーンさんが図鑑を開発した時期とオレが旅立ってもいいような歳になる時期が丁度噛み合ったから立候補して、なった。そんなかんじ。」
「それだけか?」
「俺の過去に何期待してンだよ。それだけだよ、それだけ。」
「…なんだ、俺と同い年で、それだけの強さを持ってるのだから、俺はてっきり__」
ジークが喋っていた途中で、ジム内の場内アナウンスから俺の番を告げるようなアナウンスが響き渡ったため、その時のジークが何を言ったのか俺には分からなかった。あの時は特に何も思わなかったから、その後にあの時なんて言った?なんて聞き返さなかった。聞き返せばよかったなんて後悔している今だけれど。
「タマムシシティ郊外にある、とある施設の地下に怪しい奴らが出入りしているという噂を聞いたことはあるか?」
ハナダシティを出る前、プラシオは俺とジークにそう尋ねてきた。
「いや、知らないけど。」
「じゃあ今タマムシジムリーダーが体調不良を原因としてジムを休業している話は。」
「「それは知ってる。」」
ジークと俺の声が重なる。だってそれはリーグ挑戦を目指す俺たちにとって大切な話であり、死活問題だからだ。知っているに決まっている。それを聞いたプラシオは「これは俺がタマムシシティに入った時に聞いた噂話なんだが」と前置きをして話し始めた。
曰く、タマムシジムリーダーの体調不良は嘘。本当はその郊外にある施設の地下に閉じ込められているという。
「その怪しい組織はポケモンの力を持った新しい生物を生み出そうとしているらしい。これは俺がその組織の下っぱにさいみんじゅつをかけて聞いた話だから、真実と思ってもらって構わない。」
「お前結構野蛮なのな…。ん?でもそれとジムリーダーがなんで関わりあってくんの。」
「このアホノメが…。タマムシジムリーダーはタマムシ大学のポケモン分野全般における准教授だぞ。カントー地方で2番目にポケモンの生態に詳しいってことだ。で?奴さんは新しい生物を生み出そうとしてるいるんだろう?」
「…適任者!技術が既にその組織にあるなら、知識を貰えれば理想の生物を生み出すことができるかもしれない!」
パチンと俺が指を鳴らすと、そういうことだとプラシオは頷き、口を開いた。
「どうする。俺はその組織を潰す。ジムリーダーの身柄をいつまでも奪われているままじゃリーグ挑戦もできやしない。」
それに、今この事態に気づいているのは俺たち3人だけだぞ。
俺たちを試す、もしくは挑発するように話すプラシオに、__年下からそんなことを、そんな風に言われて、年上が何もしないというわけにはいかないと感じた俺たち二人は、二つ返事でその話に乗ってやることにした。
タマムシジムリーダー奪還及び組織壊滅作戦は、ここに始まったのだった。
作業BGM ポルノグラフィティ「青春花道」