一日と人生のなにがちがうの
「コーラルどーしたのー?」
いつもうるさいお友達が静かだから、ツグハは思わず声をかけました。いつも騒がしくて面白くて、ツグハを楽しませてくれる幼馴染がこうして黙ってじっとしているだなんて、今までなかったのですから。
「ちょっと、らしくないよ。気持ち悪いよ。」
そうやってちょっと酷いことを言えばすぐに騒がしく反応してくると思いました。でも返ってきたのはうるせーという一言でした。小さくて弱々しい声でした。
コーラルがそうなった原因をツグハは知っています。先日コーラルのお兄ちゃんのシノノメくんが負けてしまったのです。
ツグハはコーラルがずっとシノノメくんの背中を追いかけてバカみたいに突っ走っていたのを昔から近くで見ていました。だから悲しいのは分かります。でも、そこまで落ち込んでしまうとは思いませんでした。
ツグハはコーラルみたいに何か一つのことに熱中したことがありません。だから目標だとかを失ってしまった時の気持ちが分かりません。こんなに近くにいるのに、何も分かりません。ツグハは何もしてやれません。
「放っておけばいい。これはコーラル自身の問題だ。彼自身が何か落としどころを見つけて消化しないといけない。俺にだってどうにもできないよ。」
プーくんはそう言いますが、ツグハはどうしてもコーラルの様子を見ているとやきもきしてしまいます。でも、プーくんがどうにもできないって言うなら本当にどうにもできないんだと思います。プーくんはいつも正しいことを言うのですから。
「プーくんは、コーラルの気持ち分かる?ツグハ何にも分かんないよ。」
「……人生、一度は挫折を経験するものだ。」
それは肯定なのでしょうか。プーくんはそれ以上何も言いません。
静かなプーくんの部屋は久々です。それがとても寂しくて、つまらなくて。ツグハはどうしたらいいのか分かりません。ツグハが女の子だから分からないのでしょうか。それとも、何かに熱中したことがないから?何も分かりません。本当に、何も。