チョコかぶりのウツボ(2022.2.14 Valentine)


!!attention!!

*思いついたまま勢いで書き殴りました。
拙い文章で申し訳ございません!
いきなり始まって、いきなり終わります!

*キャラクターの口調や細かい設定など異なる可能性がございますがお許し下さい。

*読んだ後の誹謗中傷、苦情など受け付けておりません。



宜しければ↓↓↓



─────



監督生は思いつく限りの男達にバレンタインチョコを配り歩こうと思い、オンボロ寮のキッチンに立ったはいいが、このタイミングでオンボロ寮の名に相応しいオンボロ具合のキッチンは、遂に使い物にならなくなってしまった。
バレンタインのお返しに期待していた自身の浅ましい考えにバチが当たったのか、と落ち込んだ監督生だったが、アズールに今月のバイト日数を増やすことを条件にモストロ・ラウンジのキッチンを貸して貰うことにした。


***


誰も使わないモストロ・ラウンジのキッチンは1人で使うには広過ぎる。
1人寂しく、監督生はボソボソと拙い動きでチョコを作っていると、背後から突然声をかけられた。

「ねえ」

「っ!?」

驚きで声にならない声が出る。
恐る恐る後ろを振り向くと、オクタヴィネル寮の紋章を着けた生徒が佇んでいた。
見たことの無い顔だ。
どことなく胡散臭い笑みを浮かべながら、その生徒は距離を縮めてきた。

「そのチョコレートって誰にあげるの?」

隣に来たかと思えば、監督生の手元にある湯煎してトロッと溶けたチョコレートを興味深そうに覗き込んできた。
監督生は、その生徒の様子に違和感を覚えたが、何とか乾いた口を開く。

「あ……と、友達にあげようと、思って……」

「へえ、友達?」

言葉が出ず、小さくコクリと頷いた監督生。
その瞬間、その生徒の胡散臭い笑みが嘘のように消え、どんよりとした瞳で監督生を睨み付けた。

「嘘だ」

「え?嘘って……別に嘘じゃ「嘘だ嘘だ嘘だ!本当は僕に言えないような関係の男にあげるんだろう!!」

豹変したその生徒は、監督生の言葉は全く届いていないようで、独り善がりな言葉を叫び始める。

「僕がどれだけ君を愛しているか知ってて、この仕打ちなのか!!??
僕はずっと君を見てきたのに!!
誰よりもずっとそばに居たのに!!
僕じゃない誰かに渡すなんて許せない!!」

言葉の勢いのまま、監督生の手元にあったチョコレートの入ったボウルを奪っていった生徒。
怒り心頭のようで、今にもボウルをぶちまけてしまいそうな様子だ。
状況が全く掴めないながらも、監督生は何とか彼の琴線に触れないようにしようと心掛け、声をかける。

「ほんとーに!ただの友達にあげるんだって!ただの、友達!!
貴方には、ほら、特別に特製のチョコを作るから、ね?」

そうっと手を差し出し、ボウルを返すよう促す。
しかし、そんな監督生の言葉が気に入らなかったのか、彼は「嫌だ!」とまた癇癪を起こした子供のように叫び始めた。

「嫌だ!嫌だ!!
僕のをお前が作るのは当たり前なんだ!!
僕以外の誰かを思って作った、このチョコレートが気に食わないんだ!!
こんなもの、こんなもの……っっ!!」

彼は何を血迷ったのか、ボウルを監督生の方へ向かって投げようとしていた。
これは不味い!怪我する!と咄嗟に監督生は頭を隠す様に腕で顔を覆った。
そして、次にくる痛みに備えたが、監督生を襲ったのはトンっという軽い衝撃と、生暖かい何かが頬や腕のあたりを掠ったぐらいだった。
直ぐに、少し離れたところでガラス製のボウルが落ちる鈍い音が聞こえた。
そろりと目を開いて、広がっていた光景に唖然とした。

「……あっつ〜」

目の前には鮮やかな青い髪のオクタヴィネル寮の寮服を身に纏った生徒が背を向けて立っていた。

「フロイド、先輩……」

手についたチョコを振り落としながら、鮮やかな青い髪の生徒、もといフロイド・リーチは監督生に視線をやる。

「小エビちゃん、怪我はないー?」

「は、は……い、大丈夫です……」

「そっかあ、なら良かった〜」

にこーっと柔らかく笑うフロイドに、監督生は数分間極度の緊張で固まっていた肩の力が、自然と抜けていくのを感じた。
そんな監督生の様子を確認したあと、フロイドは目の前で腰を抜かしている生徒に視線をやった。

「お前さあ、小エビちゃんに何しようとしてんの?」

フロイドは座り込んでいる生徒に詰め寄ると、容赦なく上半身を蹴り倒した。
呆気なく倒れた生徒の胸に片足を乗せ、体重をかける。

「なあって。
何しようとしてたんだって聞いてんだけど?
聞こえねえのかよ、おい」

片足の下敷きになっているその生徒は、恐らく何かを話そうとしているが、胸が圧迫されてろくに息が出来ていないのだろう。
カヒュッという苦しげな息のみが漏れ出ている。
徐々にその生徒の顔が赤から青に変わり出したのを見て、流石に不味いのではと思い、慌てて監督生は止めに入る。

「フロイド先輩!あ、あの!もう、死んじゃいますよ!その人!!」

「ん?あ〜……」

フロイドは監督生とその生徒を何度か見た後、渋々と言ったように胸から足を退ける。

「小エビちゃん、いいの?
コイツ、このままで」

「良いも何も……私は特に何もされてないですし……」

そう言い淀む監督生に、フロイドは納得いかないというように口をへの字に曲げている。
そんな2人の隙を見て、監督生を襲った生徒はその場から慌てて逃げていった。

「あのクソ雑魚、あんな元気なら、また小エビちゃんに同じことするかもしんないよ?
肋の一、二本くらい折っても良かったのにさあ〜」

「そんな怖いこと言わないでくださいよ!」

「本当のことしかゆってねえしー」

監督生に止められたのが気に食わなかったフロイドは、ツーンとそっぽ向いている。
フロイドの気を逸らすように、監督生はチョコまみれのフロイドの左手に触れた。

「赤くなっちゃってますね……。
痛くないですか?」

「……うん、ちょっとピリピリするけど、それだけ」

ボウルに入っていたのは、人肌ぐらいの温かさに溶けたチョコレートだったが、やっぱり人魚のフロイドには少し熱かったようだ。
チョコが付着した皮膚は若干赤く腫れていた。
監督生はその状態を見て罪悪感を覚える。

「……すみません。
私がもっと上手く対応出来ていれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに……」

シュンと項垂れる監督生。
フロイドはつまんなさそうに呟いた。

「じいしきかじょーってヤツだよ、小エビちゃん」

「じいしき、かじょう……?」

「オレ、別に怒ってないしい、やりたくてやったことだし。
それに対してウジウジしてる小エビちゃん、めんどくさぁい」

口を尖らせてそう言い切ったフロイドに、監督生は何か吹っ切れたように小さく笑った。

「……そう、ですね。
あ、でも!その手とかはちゃんと冷やさないと、水膨れになっちゃうかもしれませんよ!」

監督生に腕を引かれたフロイドは、冷水で手などを冷やすよう言われる。
「保冷剤とかないんですか?」と、保冷剤を求め動き回る監督生の後ろ姿を見ながら、フロイドはふと声をかけた。

「ねえ、このチョコ、オレにもくれる予定だったの?」

「あーはい、そのつもりでした。
まあ、残念ながら全部パーになっちゃいましたけどね」

「ふーん」

「でも、フロイド先輩には今回のお礼も兼ねて何かお渡し出来たらなーって思ってます」

「そんな大したものはお渡し出来ないと思いますが……」と監督生は苦笑していた。
しばらく無言でフロイドは監督生を見つめると、ニヤリと笑った。

「い〜こと思いついたあ」

「な、なんですか……?」

嫌な予感がした監督生は、少しフロイドから距離をとった。
そんな抵抗も虚しく、瞬く間に距離を詰められた監督生は壁際に追い詰められてしまった。
顔の両隣にはフロイドの手が、股の間はフロイドの片足が入り込んでいる。
所謂、壁ドンというものだろうか。
恐怖か、はたまた別の感情か、得体の知れない感情で高鳴る鼓動が監督生の思考を乱していく。

「ビクってしちゃって、可愛いねえ〜小エビちゃん♡」

「ふ、フロイド先輩、これは一体どういう状況でしょうかね……?」

「オレね、チョコレートいらなぁい」

「そう、ですか……?じゃあ「勝手に貰ってっちゃうから」……え?」

監督生は聞き返そうとするが、途端に近くなったフロイドの顔に驚き、ギュッと目を瞑ってしまった。
真っ暗な視界の中で、唇の端に柔らかい微かに濡れたものが触れ、チュゥと可愛らしい音が響いた。
しばらくして、フッと軽く笑ったような息が頬を掠めたと思えば、目の前の気配が離れていくのを感じた。
監督生は恐る恐る目を開く。

「あ、あの……え、いま……」

状況がいまいち読み込めず、ぐるぐる目を回す監督生。
フロイドは愉快そうに笑いながら言った。

「ごちそーさまでした。
小エビちゃんのチョコ、美味しかったよ〜♡」

まだ唇の端に残る感触。
そっとその部分に手をやると、僅かにチョコが付着していた。
恐らく、フロイドが庇いきれなかった範囲のチョコが監督生の顔にも飛び散っていたのだろう。
何をされたか理解した監督生は、1歩もその場を動けなかった。
フロイドは石のように固まった監督生の頭を撫で回すと「お返し、楽しみにしててねえ♡」と言って去っていった。

暫くして、監督生はキャパオーバーでその場に蹲っていたところを、様子を見に来たモストロ・ラウンジの支配人ことアズール・アーシェングロットに発見され、何とか自分の寮に戻ることが出来た。

後にアズールは当時の様子を、砂を吐くようにこういった。

その時の監督生の表情は「恋する乙女」だった、と。


-END-



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-優刻-