14
「そういえば凛君」
「ぬー?」
ふと思い出して、凛君に声をかける。
凛君は首をこて、と傾げた。
「メールくれたけど、私に何か用だった?」
はっと息を飲んだ凛君の、一瞬で変わる表情。
どうしたんだろう、と凛君の様子を伺う。
凛君は俯いたままじっと地面を見つめてる。
「……凛君?」
声をかけても動く様子はなくて。
暫くして、深呼吸をし始めた。
「ひなさん!」
「はい!」
いきなり声を掛けられてびっくりした。
思わず声を張って返事をすると、凛君は真剣な眼差しで私を見ていた。
「わん、ちゅー小学校卒業したさぁ」
「あ…そっか、今日だったよね。
おめでとう!」
日付感覚が狂ってるけど、確かに今日だった。
「にふぇーでーびる!
で、わん、四月から中学生さー」
「うん、そうだね」
「ひなさんと同じ、中学生あんに?」
「うん」
確かめるような問いかけに、頷く。
私は来年三年だから、同じなのは当たり前だ。
凛君はまた深呼吸をした。
そして、
「わん、ひなさんが好きだ」
そう、言った。
「…え?」
一瞬なんて言ったのか解らなくて、瞬きをする。
凛君は真剣な瞳で、視線を逸らそうともしない。
「ひなさんが、どこぬ世界ぬ人間とか、全部関係ねーらん。
わんや、ひなさんがしちゅんさぁ。
わんと、付き合って」
「っ、…はい」
頷いた瞬間、凛君はまた、強く抱きしめてくれた。
「っやったーぁ!
ひなさん、でーじしちゅん!」
「私も、大好きっ!」
凛君の体を抱きしめて、私も叫んだ。
凛君、私、こんなに幸せでいいのかな。
そう思えるくらい。
とても、幸せ。
それから私たちは、日が暮れるまで話した。
抱き締め合っていた体は離れ、でも、手のひらは繋いで。
今まで話せなかったことや、私の家族の話。
凛君の小学校の話を飽きるくらいにして、まだまだ話したりないっていうタイミングで、凛君の携帯が鳴った。
ちらりと携帯を見て、凛君がみるみる表情を変えた。
「凛君…?」
「忘れてた…」
「え?」
ぽつりと呟いた後、凛君は恐るべき早さで携帯を耳に当てた。
「ゆーしねーし!!」
慌てた凛君の声の後に、携帯から聞こえる慎の声が恐ろしい。
「……ぅわ」
思わず呟いて、聞かなかったことにしよう、そう決めた。
「わーった!
なますぐけーる!
ひなさんも連れてく!
うー!」
…私の名前を呼ばれた。
どうやら、早く帰ってこい、的な電話みたいだ。
凛君は携帯を切った後、繋いでいた手を引いて立ち上がる。
「なますぐけーらないと、ねーねーんかい殺される!」
「じゃ、行こっか」
二人で手を繋いだまま、歩き出す。
このまま行ったら、愼に凄くからかわれるんだろうな。
でも、いっか。
それが私たちの選んだ結果。
此の世界で選択した、私の道。
変わったようで変わらない、私の世界。
きっといつまでも、君といられる。
変わらぬ世には、きっと君と私の未来がある。
「ね?
凛君」
凛君には聞こえないように呟いたつもりだった。
でも、凛君は私の方を振り返って問う。
「ぬーがあびった?
ひなさん」
私は、凛君の手を強く握って。
「なんでもない!」
そう、笑った。