夜這い


俺は今人生の中で一番苦しい場面に立っているのではないか、と思っている。

モンスターに襲われた時も、デルカダールの奴らに追いかけまわされた時も、ましてや、崖から落ちるなんてピンチも乗り越えた俺だが、今目の前にあるコレだけは乗り越える自信がない

と、言うか、理性うんぬんの問題だ。

一つ言っておくが、俺も男だ。
まだまだ成長段階の若い男だ。
ロウやグレイグみたいなムッツリとはいかないが、それなりに興味はある。

ましてや、愛してやまない女が目の前にいる。

いや、それならいい。いる、だけなら…だが、この状況は…

「ぅ〜…ん…」

ギシッと音を立てたベッド。その上に寝転ぶは旅の仲間であり、悩みの種でもあるリア

「…マジかよ…」

蒸し暑いサマディー地方での宿泊。薄着なのは仕方ない。事実俺も上半身裸な訳だが…

「危機感無さすぎだろ」

信頼しきってなのか、はたまたわざとなのか、リアは薄い布地のシャツ一枚。しかもボタンは上3つ開けたままで少しでも動けば色々見えてしまう状態

あぁ、何故こうなったのか…
大体クジで宿の部屋を決めるというのは如何なものか…いくら仲間であっても男と女。普通あり得ないだろう…なのに…






(あ、カミュと同室だ)
(は?)

(え、リアとカミュが同室{emj_ip_0793})
(それはちょっとまずいんじゃない?シルビアさんとならともかく…)

(そうね〜…ならもう一回引き直しましょうか?)

(別に私は構わないよ。それよりもう寝よう?結構疲れちゃったし)
(本当にいいの?なんなら私と変わる?)

(マルティナの方が危ないよ。それに、私色気ないし、大丈夫だよ)
(何かあったら大声出すのよ!)
(ははっ。わかったよ)








「何が色気ない。だよ…バカヤローが」

月明かりに照らされた白く柔らかそうな膨らみにスラリと伸びた脚
所々傷はあるものの、綺麗な身体に喉が鳴る

「チッ、こんな事なら早く言っとくべきだったか?」

自分が彼女の事を好いている事は絶対に知られたくないと思って隠し通してきた事が仇になったと後悔

だが、同時にチャンスでもあると思っていた

旅をして、ある程度は触れる機会もあるものの、その一歩先をどうしてもいけなかった
告白して、振られでもしたら気まずくなる。そんな思いからどうしても先に進めなかった。
だが、隠せば隠すほど思いは強くなっていき、独占欲や嫉妬といった醜い感情が自分を支配する

欲しい…欲しい…リアが欲しい…

最近はそればかり考えていた。


「だからって、寝込みを襲うとかないだろ…」

スゥーと気持ち良さそうに眠る彼女を見ながらどうする事もできずに悶々としていた

どうする…少しだけならリアも気づかないんじゃないか?

そもそもそんな格好で寝て、誘ってるようにしか見えないだろ

「……少しだけ、少しだけなら…」

そろそろと伸ばした腕は少しずつリアの胸元に…


「……」

はぁはぁと荒くなる呼吸を落ち着かせながら服に手をかける
ボタンが開いたシャツの隙間からそっと指を忍ばせる

むにっと柔らかな感触に指が沈む

あぁ、遂にやっちまった…

リアの反応は、と見れば何事もないように静かに寝息を立てている

そういえば、ベロニカが言ってたな。一度寝ると中々起きないって…

「……起きないお前が悪いからな」

忠告を聞かないお前が悪い。危機感がないお前が悪い

そう言い聞かせながらボタンを1つ1つ外していく

露わになっていく肌…その度に自分の中心に熱が篭るのを感じる

「…」

綺麗だ…。そう呟き露わになった胸を両手で包むように触れる

形を変えながらゆっくりと、丁寧に…時折中心を掠めると声を漏らす彼女が愛おしく、何度も何度も繰り返す

















「…ん、」

鼻を抜けるような声に反応して顔を上げれば微睡んだ瞳がこちらを見ていた


「{emj_ip_0793}」

突然な事に驚いて彼女の服の中に忍ばせていた手を咄嗟に戻した


ヤバい…ヤバい…


「…か、みゅ?」

何をされたのかわかっていないのか、掠れた声で名を呼ぶ


ドッドッと高鳴る心臓を抑えつける


「…?……」


暫くじっとしていればリアは何事もなかったように寝息を立て始めた




「あっ…ぶねー…」


もしも、あの時完璧に起きてたら自分は完全に犯罪者だ

仲間の寝込みを襲う最低野郎で、2度とリアと顔を合わす事はなくなっていただろう


すぅーすぅーと寝息を立てる彼女の顔を覗き込み、そっと前髪を払う


「ごめんな」


一言謝り自身もベッドへと潜り込んだ






















翌朝



「カミュー!朝だよー!」

元気よく掛かっていた毛布を剥ぎ取られ大きな声で挨拶してくるリアに目を細めながら欠伸を一つ


「んー?寝不足〜?」

「…まぁな」

お前のせいで。と言う言葉は咄嗟に飲み込んだ

もしも、昨日のアレを思い出されても困るからだ


「しっかりしてよー!まだまだ旅は続くんだからね!」

「へいへい」

いつの間にか身支度を整えた彼女は先に下に降りていると言って扉に手を掛けた、かと思えば手を前に出し上下しながら俺を呼んだので、なんだ?と思いながら近づく

「なんだよ、」

「今度は夜這いじゃなくてちゃんと言ってよね。…狼さん」

「!?おま、気付いて…!」


ふふっと妖艶に笑って扉を閉めて行ったリア



「…あのやろー…」


気付いてたんならもう遠慮はいらねぇ


「覚悟しとけよ、」



疼く体を抑えさっさと身支度を整え下で待つ彼女に言ってやろう








(お前が欲しくて堪らない)