Today is a bad day

セシリー・カーセルン。彼女は魔女で、リドルと同い年で、同じスリザリン生で、そして唖者だ。
リドルは原因は知らないが、セシリーは生まれつき声が出ないらしい。それは魔女や魔法使いにとっては大きな欠陥である。
魔女及び魔法使いは幼い頃、呪文を唱えることで魔法を制御する。呪文は一種の通路のようなもので、それを唱えることにより魔法の効果を限定する。そのため、唖者は幼少期に制御ができないため、魔女並びに魔法使いとして大成することは難しい、というのがリドルの見解だ。実際に調べてみたことはないが、間違いなくそうだと思う。
それなのにセシリーは呪文を唱えられないのにも関わらず、魔法を制御してみせた。
セシリーは3年生までは自宅で魔法の練習をしていたらしい。彼女は一応純血の家系だから、唖者であろうとも魔女としてできる限り名を成さなければならなかったのだろう。セシリーは4年生の時に魔法の制御を完璧にし、晴れてホグワーツへと入学を果たした。
1941年9月1日。ホグワーツ特急の中では既に編入生がいる、と話題になっていた。明らかに1年生ではないのに黒色のネクタイをしていればそうなるのも当然だ。
そしてホグワーツへ着くと、皆が編入生の紹介を待っていた。リドル自身、表面上は穏やかにしながらも、心の底ではどんな人物か、と想像を膨らませていたと思う。
そして1年生の組みわけが済んだ頃、校長が編入生を紹介した。セシリー・カーセルンという名に、一部の生徒は驚きを隠せないでいて、スリザリン生のほとんどがその反応をしていたことから、純血だとすぐに分かるだろう。
簡単に組みわけが済んだ後(セシリーは数秒待ってスリザリンに決まった)、校長の話の後に食事が始まる。
スリザリン生の誰かがセシリーに声をかけた。その返答は、セシリーが杖を出し、空間に文字を書くことによってされたことにより、セシリーが唖者だということを全校生徒が確認したのだ。

そして今、クリスマス休暇にホグワーツに残る物好きな人物はスリザリンでは去年まではリドルだけだったが、今年はセシリーも増えた。
今日はクリスマスイヴ。この後はホグワーツに残った生徒と教授たちでささやかなパーティーだ。それはいい。
けれど、リドルにとって重要なのはその後だ。せっかくこのクリスマス休暇にホグワーツを調べたいと思っていたのに、セシリーがいたのではなかなか遅くまで調べることは難しい。もう既に課題は済ませてあるので全ての時間を探索に使いたいが、セシリーがいるのではその時間も限られる。たとえ1人でも、無関係な人に怪しまれるのは避けたい。

「憂鬱だ……」

思わず言葉が出てしまう。
さあ、いつもと変わらない、憂鬱な日々の始まりだ。





──リドル、パーティー行かないの?

セシリーが空中に、流れるような筆記体で書く。金色で浮かび上がるその文字は、リドルが読んだのがわかるとすっと空間に溶けた。リドルは先程まで文字のあったところを見るが、既にあとは何も残っていない。

「ああ、行くよ、ミス・カーセルン。先に行っててくれるかい?もう少しここに居たいから」

セシリーはリドルの言葉に頷いて、談話室を1人出る。リドルはその背を見送ってから、ゆっくりとソファから立ち上がった。
暖炉の日がパチパチと燃えている。おそらくこの談話室の外は凍てつくような寒さだろう、と思うが、少なくとも、これから行われるパーティーよりは良いだろう。ダンブルドアと同じテーブルにつくなんて最悪だ。
リドルはそっと談話室のドアを開けた。