大好きだった。
ずっとずっと大好きだった。
そんな彼が、今日片想いを実らせた。

中学からずっと好きだったというあの子にとうとう彼が告白する。それを聞いた時は心臓がひっくり返るような気分になった。まるで世界中の幸せをかき集めたかのような笑みで結果を私に告げてきた彼に何といえば正解なのか。そんなの「おめでとう」しかないじゃない。
例えば私が彼を、彼の片想いよりずっとずっと長い時間好きだったとしても。
この恋心は無残にも、言葉にする前に砕け散ったのだ。

「フラれたの?」

放課後の教室に一人残り、静かに涙を流していた私にかけられた愛のない言葉。机に突っ伏すのをやめ、むくりと起き上がり声のした方を見ればそこには思った通り縁下がいた。

「……ううん」
「……あぁ、じゃあ、とうとう実ったんだ。あっちの恋が」

『あっちの』を強調され、少しだけむっとしたけれど怒る気力も残っていない私には俯くことしか出来ない。
そんな姿を見て、縁下は自身の大きな手で優しく私の頭をポンポンと撫でた。

「言わなかったの?」
「言える、わけ……ないじゃない……っ」

あんなにも。あんなにも幸せそうな彼の笑みに「私も好きです」なんて言えない。言えるわけがない。弱虫で臆病な私には、想いを告げる権利なんてないのだから。

「でも、好きだったの……」

だけど。
権利なんて無くたって、好きだったのだ。どうしようもなく、どうにも出来ないくらい私は彼に恋をしていた。

「じゃあさ」
「……?」

ふいに頭上から手が離れ、縁下の低い声に顔をあげる。
夕暮れの色が、縁下の髪を染めて綺麗に光って見えた。真剣な眼差しは私だけを映していて、いつもの眠たげな雰囲気なんて微塵もない姿にどきりとする。

「俺にしときなよ」
「……え?」

隣の席に座った縁下はこちらに体を向け、首を傾げる。不敵な笑みで「ね?」と言われ、私の脳内は完全に真っ白になった。

「そ、んな……じょうだ」
「冗談に思える?」
「……っ」

臆病風に吹かれて逃げようとする私の手の甲に彼は自分のを重ねてきた。ごつごつした指が視界に入って、今まで何にも感じなかった縁下が男の子だと認識させられ、心臓が早鐘を打つ。

「俺だったら苗字を泣かせたりしないよ?」
「急に言われても……困る」

失恋の傷も癒えない内に告白されれば誰だって困惑するだろう。そのせいか落ち着いていた涙がまた滲みだして私は再び俯いた。

「好きだよ、苗字」
「だから――――!」

困るんだって、そう言おうとしたのに言葉は口から出てこなかった。唇に柔らかいものが当たって、視界は急に動いた縁下のせいでピントが合わずにぼんやりとする。
ちゅ、とリップ音がしてようやくキスされたのだと理解した。途端に顔に熱が集まっていくのも分かってその羞恥心のせいでさらに熱があがっていく。

「もう、手加減しないから」

そう言って立ち上がった縁下は、今までで一番満足げな顔で笑っていた。

これが運命と信じてほしい
(俺だけがお前を幸せに出来ること、いい加減気付けって)

お話のネタはフォロワーさんに頂きました。


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