朝起きたら骸さまがじっと見ていた。なんだろう。昨夜の酷使した喉がひりひりと痛みを訴えてくる。何か水分を摂取したいのだがそれより何より骸さまの頭上に浮かんでいるものが気になる。

『なんですか、それ』

渇れた声で聞いてみたが反応は返ってこず。それどころか気づいていないみたいだ。
もしかして骸さまには見えていないのだろうか。骸さまの謎の数字を見つめていると身体に不調がないか聞かれた。不調って…。昨日散々な目に合わせられたのに当の本人がそれを聞くか。腰はダルいしえぐられるように突き立てられた中も違和感が拭えない。しかしそれを気にかけるような人でないことは知っている。
何と返すのが正解なのか寝起きでまだぼんやりとする頭を悩ませているとさわさわと身体を撫でられた。……今さっきその口で不調はないか聞いてきたのに朝っぱらから盛るのはいかがなものか。やんわりと『やめろや、骸さま』的なことを言うと一拍置いたのち意地の悪い顔をして楽しそうに目を細める。

「ゆっくりしていきましょう」

不穏な言葉と共にぬちゅりとした水音が鼓膜を震わせ、反射的に閉じようとした足を暴かれた。
音を立てながら骸さまの指が私の中で暴れて、それに呼応するように息が上がっていく。
しかし先程から骸さまの頭の上にある数字が気になってどうにも集中できない。あんまりねだるようなことを口にしたくはないが、後ろからがいいと伝えるとどこか嬉しそうに目を輝かせた。
容赦なく打ち付けられ、渇れたと思っていた筈の声はそんな事実などなかったかのように再び甘くねだるように空気を揺らす。
中に注ぎ込まれた熱に自分の身体も甘く溶かされてしまいそうでくらくらとした眩暈に襲われる。呼吸が整う間少し休んで振りかえれば骸さまの数字がぐるりと回転して変わったところだった。だから何なんですか、それ。口にしたところで答えられるとも思えないが。

*

着替えてボンゴレ本部に向かう途中でも相変わらず骸さまの頭の上には数字が浮かんでいる。
もしや、と思い執務室に入るなり骸さまの背中に抱きついてみた。
少し驚いた顔をしたがすぐに笑みを深くしてソファーへと誘われる。
腰かけた骸さまはベルトを緩めて軽く足の間を開くと意地悪く見下ろしてくるだけで動こうとしない。したいならその気にさせてみろってことか。
諦めて膝をついて骸さまの足の間に身体を滑り込ませ、下着に手を伸ばす。
ぴょこんと頭をもたげて立ち上がりつつあるそれに舌を這わせていくと徐々に硬度を増していく。それを口に含み丹念に口内で転がせば更に質量を増していく。骸さまの性欲って一体どうなってるんだろう。まるで底無し沼みたいじゃないか。
しばらく手と口を使って愛撫していけば、荒くなってきた吐息といつもより赤みを帯びてきた骸さまの頬が限界が近いことを知らせる。
ぐっと頭を押さえつけられて小さく呻いたかと思えば口の中に吐き出された。口の中に収まりきれなかった白濁の熱が口の端からつぅっと垂れる。
そして骸さまの頭の上の数字がまたもやぐるりと回転して増えた。

「今日は珍しいですね。お前からこういったことを求めるだなんて」
『ええ、まあ…』

検証ですなんて言えるはずもなくティッシュに口の中のものを吐き出しながら曖昧に笑っていると「今朝のだけでは足りませんでしたかねえ」と不穏なことを口にしてソファーの上へと寝かしつけられそうになって慌ててストップをかけた。

『あの、骸さま。私これから用事があるので!』
「僕といるよりも…ですか?」

その骸さま最優先な考え方はいかがなものか。しかし強く否定できないでいる自分が悔しい。でも今日の私には骸さまを説き伏せるだけの理由を用意している。

『クロームと約束しているんです』
「……まあ、いいでしょう」

クロームの名前を出せば骸さまは引き下がることが多い。面白くないこともあるが、しかしこのカードは非常に有効でちょくちょく利用させてもらっている。
乱れてしまった身なりを整えていると「ではクロームのところまで送りましょう」という着いていきます宣言にげんなりしながら、お願いしますと呟いた。

*

部屋を出るとちょうど沢田綱吉が私たちの前に居た。どことなくまだボンゴレの人間には慣れない。生まれ育った環境が違うということもあるがどうも彼らの甘っちょろい考えに馴染むことが出来ないからだ。
沢田綱吉の頭にも骸さまと同じような数字が浮かんでいる。骸さまよりもずっと少ないその数字に気をとられていたら声をかけられたようだが、うまく反応できずとりあえず頭を下げた。
困ったような顔をしてじっと私を見ている。
この人はこんなに気安く私達になんて接しても良いのだろうか。その昔、沢田綱吉の身体を乗っ取りマフィアの殲滅と世界対戦を企てていた私達にボンゴレ内で批判が起こっていることは知っている。でも骸さまとクロームが霧の守護者の座におさまっている限りは強く反発も出来ないようで、ずるずると私達はボンゴレに籍を置いたままになっているのが原状だ。

「行きますよ」

不意に影が射し肩を抱かれ沢田綱吉の前から引き剥がすように歩かせられる。足がもつれそうになりながら振り向けば沢田綱吉はまだ困ったままの顔で私を見ていた。

「そんなにしげしげと見るんじゃありません」

面白くなさそうにぴしゃりと言い放って肩を抱く力が強まった。
さて、これからどうやって骸さまにご退散願おうか。クロームが調理室でチョコレートの材料を用意してくれている。それなのに骸さまが着いてきたんじゃ意味がない。
ぷかぷかと浮かぶ骸さまの数字を眺めながら逃走経路を頭の中で組み立て始めた。




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